What Is the "Last Elixir Syndrome"? Considering Why You Can't Use This Valuable Item

夕日を背に、ほこりが積もり蜘蛛の巣が張った紺色の道具袋の中で、3本の小瓶がほのかに金色に光っている。 game
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Preface

RPGをクリアしたあと、ふと持ち物を見てみると、貴重な回復アイテムがたくさん残っているのに気づくことがあります。
ゲームをプレイしていると、一度はこういう経験があるのではないかと思います。
自分自身、このような状況は多く経験してきました。

「次のボスはもっと強いかもしれない」と取っておいて、そのボスを倒したら、また次のボスのために取っておく。
結局、ラスボスを倒しても使わずじまいで、エンディングを迎えてしまう……こういう状態を「ラストエリクサー症候群」と呼んだりします。

なぜ貴重なアイテムは、こんなにも使えないのでしょうか。
今回はこの「使えない心理」と、使わずに終わることは本当に悪いことなのか、そしてゲームの作りの側にも原因があるのではないか、という点について考えてみようと思います。

 

ラストエリクサー症候群とは

名前の由来は、ファイナルファンタジーシリーズなどに出てくる、HPやMPを全回復する貴重なアイテム「エリクサー」だと考えています(詳しく調べたわけではないですが)。
そして、ファイナルファンタジー6では、全員を全回復させる「ラストエリクサー」というさらに貴重な回復アイテムが登場します。
これらを使うことが「もったいない」と感じて最後まで使えず、結局使わないままクリアしてしまう、というのが主な症状です。

もちろんエリクサーに限らず、強力な使い捨ての攻撃アイテムや、使用回数が決まっている貴重な武器なども同じです。
「症候群」と大げさな名前が付いていますが、要はゲームをプレイしていると起きがちなあるあるだと思います。

 

なぜ使えないのか

使って無くなる痛みの方が大きい

1つ目は、使ったら無くなってしまう、という痛みis.

エリクサーを使えば、その場の戦闘は楽になります。
しかし、手持ちのエリクサーが1つ減ったという「損」の方が、どうしても目に付いてしまいます。
(行動経済学でいう「損失回避」、得をする嬉しさより損をする痛みの方を大きく感じる、という話に近いと思います)

手に入る数が少ないアイテムほど、この傾向は強くなります。
99個持っている回復薬なら気軽に使えても、ゲーム中に数個しか手に入らないアイテムだと、使うたびに「本当に今で良かったのか」と考えてしまいます。

 

この先がどれだけ難しいか分からない

2つ目は、先の見えなさis.

初めて遊ぶゲームでは、このあと何が起こるのか、どのくらい強い敵が出てくるのかが分かりません。
「もっと強いボスが出てくるかもしれない」と考えると、今ここで使うより、取っておく方が筋が通っているように見えます。

そして厄介なのは、この考え方がどの時点でも同じように成り立ってしまうことです。
次のボスの前でも、その次のボスの前でも、「この先にもっと強い敵がいるかもしれない」という理屈は変わりません。
ラスボスの手前まで来ても「ラスボスが第二形態、第三形態と続くかもしれない」と思うと、まだ使えなかったりします。

 

持っていること自体が安心になる

3つ目は、持っていること自体が保険になっているという点です。

エリクサーを持っていれば、いざという時に何とかなる、という安心感があります。
実際には使っていなくても、手元にあることで気持ちに余裕を持ってプレイできている、という面はあるのではないでしょうか。

そう考えると、エリクサーは「使うための道具」というより、「持っていることで効果を発揮するお守り」に近いのかもしれません。

 

本当に「病気」なのか

ここまで書くと、使えないことが悪いことのように見えます。
しかし、本当にそうなのかは少し考える余地があると思います。

 

使わずに済んだなら成功とも言える

保険は、使わずに済めばそれが一番です。
エリクサーを使わずにクリアできたということは、エリクサー無しでもクリアできるくらい、上手に戦えていたということでもあります。

また、前の項目で書いたように、持っているだけで安心してプレイできていたのであれば、それはそれで役に立っていたとも言えます。
「一度も使わなかった=無駄だった」とは、必ずしも言えないのではないかと思います。

 

持ったまま負けたらただの損

一方で、取っておいたせいで負けてしまうのであれば、話は別です。

エリクサーを持ったまま全滅して、ボス戦をやり直すことになったら、かなりもったいないです。
使っていれば一度で勝てた戦闘を、もう一度やり直す時間がかかってしまいます。
また、苦しい戦闘をアイテムでさっと乗り切れていれば、もっと快適にプレイできた場面もあったはずです。

「使わずに勝てた」なら問題ありませんが、「使わずに負けた」「使わずに苦戦し続けた」のであれば、それは取っておくことのコストを払っているということだと思います。

 

ゲームの作りにも原因があるのでは

ラストエリクサー症候群は、プレイヤーの性格の問題として語られることが多いです。
しかし個人的には、ゲームの作りが「取っておけ」と誘導してしまっている面もあるのではないかと感じています。

 

「取っておけ」と教えてしまう作り

たとえば、次のような作りだと、取っておく方が合理的になってしまいます。

・手に入る数が少ない
・お店で買えない
・一度使うと、取り返しがつかない
・負けたときの罰が重い(長い区間のやり直しなど)

こういう作りのゲームでは、貴重なアイテムを温存するのは、むしろ正しい判断だとも言えます。
プレイヤーが使えないのは、ゲーム側の作りに対して、ある意味素直に反応しているだけなのかもしれません。

 

使わせる仕組みの例

逆に、プレイヤーに気楽に使わせる工夫をしているゲームもあります。

有名なところでは、ダークソウルの「エスト瓶」があります。
回復の回数が決まっていますが、篝火で休むと回数が元に戻るので、取っておく意味があまりありません。
むしろ使える時に使わないと損、という作りになっています。

ドラクエの「世界樹の葉」や「世界樹のしずく」も、上手な作りだと思います。
特にドラクエ4の世界樹では、ダンジョンを攻略している最中にどこでも拾えるので、手持ちを使ってしまっても惜しくありません。
貴重なアイテムなのに気兼ねなく使える、というのは良いバランスだと感じました。

フリーゲームでも、こういった工夫をしている作品をいくつか遊んできました。
六花聖剣戦記では、強力な武器は使用回数が決まっているものの、マップ終了後に回復します。
感想記事でも「他作品だと、貴重な武器はどうしても温存しがちになってしまうので、それを解決する仕組みとして面白いなと感じました」と書いていました。

YggDrasillも、ステージをクリアすると武器の耐久力が回復し、回復アイテムも復活する作りでした。
一週間無双では、回復薬を使い切っても次のバトルでは補充されるので、出し惜しみする必要がありません。

ほかにも、ボスの手前で補充できるようにする、最後の街のお店で買えるようにする、持てる数に上限を設けて「余るくらいなら使おう」と思わせる、といった方法も考えられます。
アイテムが「次の区切りで戻ってくる」と分かっていれば、使わない理由がなくなります。
プレイヤーとしても、こういう作りは素直に助かると感じます。

 

ゲームの外でも同じことが起きている

この「もったいなくて使えない」という感覚は、ゲームの外でもよくある話だと思います。

たとえば、貯金はその代表例かもしれません。
いざという時のために取っておくのは大事ですが、取っておくこと自体が目的になってしまうと、使い時を逃してしまうこともあります。

他にも、特別な日のために取っておいた服やお酒、「いつか使うかも」と思って取っておいた物など、思い当たるものは色々あります。

 

Afterword

ラストエリクサー症候群について、使えない心理と、ゲームの作りの両面から考えてみました。

結局のところ、ラストエリクサー症候群は、プレイヤー自身の問題と、ゲームの作りの問題の両方が重なって起きているのだと思います。
「もったいない」「この先がどれだけ難しいか分からない」「持っていると安心」というのは、プレイヤー側の気持ちの問題です。
一方で、手に入る数が少なかったり、戦闘に負けたときのペナルティが重かったりすると、取っておくことの方が正しい判断になってしまう、というゲーム側の事情もあります。
どちらか片方だけのせいにするのではなく、両方の要因があると考えた方が、しっくりくる気がします。

ゲームの作りはプレイヤーには変えられませんが、自分の気の持ち方は変えられます。
取っておくこと自体は、決して悪いことではありません。
ただ、取っておくことで負けたり、苦戦が長引いたりしているのであれば、そこが使い時だったのかもしれません。
「この戦闘で使わずに負けたら、やり直しの時間の方がもったいない」と考えると、少しは使いやすくなるのではないでしょうか。

 

そのほか、ゲームの遊び方について考えた記事はこちらです。
Why Can't I Enjoy Games Anymore? Thinking About Player-Side Causes
A compilation of gaming-related articles featured on this blog.
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