色は黒に包まれて(フリー・アドベンチャー)紹介・感想

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前書き

2021年7月~8月に開催された第13回ウディコンにて、僕が最初にプレイした作品「色は黒に包まれて」を紹介する記事です。
「実話型アドベンチャー×シミュレーション」という珍しいジャンルと、可愛らしいサムネイルに似つかわしくない不穏なタイトルに惹かれ、プレイを始めました。
クリア時間は約2時間でした。

ダウンロードはこちら(エントリー番号28)
第13回WOLF RPGエディターコンテスト作品ページ

ふりーむ!

ゲーム概要(ネタバレ無し)

「色は黒に包まれて」は、文章を読んで選択肢を選んでいくタイプのアドベンチャーゲームです。

物語は、主人公の河合緑が、ある会社に入社したところから始まります。
ノベルゲームのようなインターフェースで、WOLF RPGエディターでもこのような作品を作ることができるんだなと驚きました。

実体験をもとに作成されているというだけあり、会社でのやり取りや仕事内容など、具体的で細かい描写が見所です。
ただし、楽しく明るいストーリーというわけではないので、気持ちが落ち込んでいるときにプレイするのはあまりお勧めできません。
心に余裕がある時にプレイすることをお勧めします。

プライベートの時間では、どのような行動をするか選ぶシミュレーションゲーム的な要素があります。
ここでの行動を含め、全ての選択肢が最終局面でのエンディング判定に関連してきます。
軽い気持ちで適当に選ぶのではなく、自分だったらどうするかという観点で、後悔しないような選択をしましょう。
何気ない余暇の過ごし方の蓄積が、救いになることもあれば絶望につながることもあるでしょう。

また、本作は基本的にオートセーブです。
「続きから」を選べば場面単位で再開することはできますが、任意の場所からダイレクトにやり直すことはできません。
ロードを繰り返して正解と思われる選択を探し続けるよりも、現実と同じように、その場その場で最善だと思う選択を選んでプレイしていけばよいと思います。

感想(ネタバレ有り)

ここから先はネタバレ有りの感想です。
まだプレイしていない人はご注意ください。

僕が面白いと感じるゲームは、大きく分けて2種類あります。
一つは、ゲームでの操作や作業そのものが面白い作品です。
もう一つは、作品を通してプレイヤーに得難い体験を与えてくれるものです。
本作の面白さは後者であり、実体験を基にした細かな描写により、プレイヤーに現実のような生々しい感情を呼び起こしてきます。

物語の軸となっているブラック企業での体験、ASD・ADHD、精神世界への逃避などのテーマは、プレイしていて明るい気持ちになるものではありません。
しかしプレイヤーの感情を大きく揺さぶるという点で、強いエネルギーを持った作品だと思います。

実体験を基にした作品は、創作した物語のように、都合よくドラマチックには進んでいきません。
しかしそれと引き換えに、ドキュメンタルなリアルさが得られます。
僕が見たエンディングでの着地地点は希望が見える終わり方でしたが、これはゲームだからこそ、ある程度後味が悪くないようにしたのではないかと推測します。

最後の社長とのやり取りは、良い話のように終わりそうなところですが、そうはさせない所に作者の感情が垣間見える気がします。

『社長、意外と優しい面もあるんだな。人の気持ちを全く理解しない人だと思い込んでいたけど、実は良い人なのかもしれない──
なんて考えるのはご都合にも程がある。(中略)本当に良い人なら…大勢の社員の前であんなに怒鳴ったりしないはずだ。求人に致命的な嘘の情報は書かないはずだ。』

(「第8章 再出発」より引用)
このくだりは個人的に好きです。
雰囲気的に感動的な感じで終わりそうなところですが、「いや、このワンシーンに誤魔化されてはいけない」と冷静に考えるのは、僕の気持ちと重なりました。

 
本作は、キャラグラフィックが可愛らしいために、中身の邪悪さとのギャップが際立つキャラクターが多くいます。
特に序盤の難敵として君臨する村岡先輩は恐ろしく、こういう直属の上長がいるだけで、会社に行くのが本当に嫌になるんだよな、という強い共感を覚えました。
最終的には真っ向からガツンと反撃して、向こうから避けるようになってくれましたが、現実では緑のように反論することは難しいでしょう。
キャラ絵的には可愛いキャラですが、この顔を見ただけで嫌な気分になるので、本作のキャラ描写には相当なパワーがあったのだと改めて思いました。
 
この作品は、決して楽しく気持ち良い気分になるものではありません。
しかし、似た経験を持つ人にとっては、ひょっとしたら勇気づけられるかもしれません。
また、こういった経験がない人にとっては、自分が恵まれているのだという気付きになるかもしれません。
いずれにせよ、プレイした人に心を大きく揺さぶるエネルギーを持つ作品であることは間違いないと思います。
 
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