閉じ込められた少女たちが、定期的に発生する殺人事件について、裁判を通して犯人を暴いていくアドベンチャーゲームです。
登場人物は全員が魔法少女であるため、「魔法」という超常的能力を前提に推理する必要がある特殊設定ミステリです。
ゴシックな雰囲気と心をえぐる描写、個性的なキャラクター同士の関係性などが特徴です。
クリア時間は約16時間でした。
ゲーム概要(ネタバレ無し)

桜羽エマが目を覚ますと、牢屋の中に閉じ込められていました。
ゴクチョーと名乗る管理者のフクロウは、同様に閉じ込められていた少女たちに、ここで囚人として暮らしてもらうことを告げます。
少女たちは、世界に害を与える「魔女」である可能性が高いということです。

囚人生活を続け交流を深めていくエマ達でしたが、そんな中で殺人事件が発生してしまいます。
ゴクチョーは、犯人を探して処刑するための魔女裁判を執り行うと告げます。
殺人を犯した魔女を処刑するため、互いに疑い議論するゲームが始まります。
ここまでが本作の大まかな導入です。
流れとしては、章開始交流パート→事件発生→調査パート→裁判→章終了パート、という感じです。

物語を進めていると、途中選択肢が出現する場合があります。
選択肢にドクロマークが付いている方を選ぶと、バッドエンドとなります。
どんな終わり方になるか確認したい人は選んでみましょう。
バッドエンド後は「直前の選択肢に戻る」が選べるため、セーブしていなくても問題ありません。

シナリオ進行時、次に行く場所をマップ上から選ぶ場合があります。
イベントが発生するところだけ場所の名前が表示され、選択が可能です。
選択できる場所を全て選ぶと、シナリオが進行していきます。

シナリオの進行に合わせて、図鑑に人物の情報や用語集が書き加えられていきます。
ここの情報を見なくても困ることはありませんが、本作の世界により深く浸りたい場合は読んでみると良いでしょう。

裁判パートでは、他の人物の発言に対して正解のアクションをすることで議論が進行します。
何度間違えても大丈夫ですが、時間制限をオーバーしてしまうとゲームオーバーとなります。
その場合、セーブしているところからのやり直しとなるため、このパートではこまめにセーブすることを強くおすすめします。

審問開始と表示されたあと、各人物が話し始めます。
この間、右上のタイマーの時間がどんどん減っていきます。
最後まで聞くと簡単なヒントが示されたあと、また最初から発言が始まります。
何度でも聞き直すことは可能ですが、最初の発言から繰り返されるため、その分の時間は削られていくことに注意しましょう。
発言はCtrlキーや右上の早送りボタンで高速に進めることができますが、時間も同様に減っていきます。

途中、違う色で表示されている部分を選択すると、反論等のアクションを起こすことができます。
正解であればカットインが挿入され、次の審問に進めます。
間違っていた場合は、また最初の発言からスタートします。
色が変わっている発言にすぐ反論するよりも、一通り最後まで聞いてから行動した方がスムーズに進められます。
正しいアクションが出来ても、その後に関連する証拠を突きつける必要がある場合もあるため注意しましょう。

これを繰り返していき、犯人が誰なのかを暴いていきましょう。

犯人が判明した後は、全員による投票が開始されます。
投票で一番票を集めた者が、犯人として処刑されることになります。
その人物の本性や内面が暴かれるシーンであり、本作でも非常に力が入れられているシーンです。
残酷なシーンがあるため、そういったものが苦手な人は顔を背けたくなってしまうかもしれません。
感想(ネタバレ無し)

最後まで一気にプレイしてしまう魅力のある作品でした。
まず結論として伝えたいこととしては、とても面白い作品であり、価格以上に楽しめたということです。
良い点、気になった点などについて、順番に書いていこうと思います。
ゲームのアウトラインから見てわかるように、『ダンガンロンパ』(以下ダンロン)ライクな作品です。
ダンロンをプレイしたことが無いのであれば、本作を新鮮な気持ちでプレイできると思います。
少しでも興味を持ったのならプレイするべしと強くオススメさせていただきます。
本作を無事楽しめたのであれば、ダンロンシリーズも問題なく楽しめると思います。
僕はダンロンを1~V3までプレイしているので、まっさらな状態で本作を評価することが難しいです。
したがって、ここはあえてダンロンと比べる形で本作の魅力を伝えていこうと思います。
あるゲームを語る時に、別のゲームを引っ張り出してきて比べるのは行儀が悪いかもしれませんが、今回はリスペクト元が明らかなので多めに見てほしいと思います。

まず設定についてです。
主人公たちが閉鎖空間に閉じ込められ、殺人事件が起きるたびに裁判で犯人を探すという大枠は、ダンロンと同じです。
しかしゲーム全体の雰囲気は、ポップさとブラックユーモアに溢れていたダンロンと比べて、本作はゴシックでシリアスな感じがメインだったと思います。
閉じ込められる理由や、殺人事件が発生する理由もダンロンとは異なるので、その辺りの理由の差が作品の雰囲気の違いに繋がっているのではないでしょうか。
そしてそういった細かな設定の違いが、ストーリーの展開や結末に関わってきます。
表面上の設定は確かにダンロンと似ていますが、しっかり差別化してオリジナリティがあると思いました。

その他では、キャラクター同士の関係性も見所の一つです。
本作はダンロンと違い、少女しか登場しません。
したがって異性間の恋愛感情というノイズを排除し、より純化された友情や親愛といった感情にフォーカスして描写していると感じられます。
もちろん描写されるのは、ポジティブで尊いものだけではなく、ドロドロした感情や狂気的なものも描かれます。
序盤で死んでしまう人物はキャラクター性を掘り下げるタイミングがないというジレンマを、とある方法で解決しており、その点については設定をうまく利用しているなと感じました。

裁判については、ダンロンと比べプレイしやすくなっていると感じます。
色が違う発言の部分を選択するだけで反論内容が表示されるので、正しいかどうか実際に選択する前に判断しやすくなりました。
何だかんだで総当たりに頼る部分も出てくると思うので、どんどん先に進めたいプレイヤーにとっては快適であると感じます。
他の点としては、ダンロンはシューティング・パズル・アクション要素などがミニゲームとして盛り込まれていましたが、本作にはそういったものはありません。
個人的には、読むことに集中できる本作の方が、アドベンチャーゲームとして好みであると思っています。

思いもよらない方向に事件が展開していくのは、ダンロンと同様に魅力的です。
ただ、ダンロンでは犯人がかなり往生際悪く粘るのに対して、本作はややあっさり観念してしまうように感じられました。
悪あがきするのは、そのキャラクター見苦しく見えてしまう恐れがあるので、それに配慮しているのかもしれません。
ダンロンでは必ずしも事件に生かされているわけではない特殊能力(超高校級の〇○など)ですが、本作ではトリックとほぼ絡んでくるので、よく考えられているなと感心しました。

一方、気になる点としては、裁判パートの審問についてです。
後ろのほうの発言を指摘する際、早送りしてもある程度時間がかかるため、少々不便に感じられました。
設定されている時間制限との兼ね合いがあるので、仕方のない仕様かもしれません。
欲を言えば、一度クリアした部分はスキップできると良かったです。
あと、即バッドエンドになってしまう選択肢が、本当に必要かと言われると疑問でした。
バッドエンドと分かっていても、どんな結末を辿るのかという怖いもの見たさで選んでみたくなってしまいます。
そのため、選択肢のたびに横道に逸れてしまうことになるので(プレイヤーの選択ではありますが)、結果としてはテンポを損ねていたように感じられます。
しかし、ifルートとして興味深いバッドエンドもありますし、これだけのバッドエンドにもボイスを入れて作り込んでいるという点では、凄く凝った作りとも言えるので、一概に悪いとは言えません。

色々書きましたが、感想の冒頭で伝えた通り、とても面白く価格以上に楽しめる作品です。
ダンロンをプレイしていない人で、こういったミステリ要素のある作品が好きな人であれば、素直に楽しめる作品だと思います。
ダンロンをプレイしている人の場合は、外見は似ているが骨格が違う、アナザーダンロンとして興味が持てるのならばプレイして損はないと感じました。
明るく楽しくとはいきませんが、最後までワクワクできる作品でした。
感想・スクショを添えて(ネタバレ注意)
ここから先は、スクショと共に感想を書いていきます。
ネタバレがあるため、プレイ可能性がある人は絶対に見ないよう注意してください。

前半

フリーザ様と同じ声で言われると、かわいいと言われても何だか違和感があります。
ダンロンのモノクマと比べると、必要以上に煽ってきたり苛立たせられる言動が少ないので、僕は割と好きでした。

バッドエンドルートより、マミさんのオマージュです。
バッドエンドルートでの唐突なジェノサイド、本当に怖いです。

バッドエンドルートより。
明るい感じで話しているのが辛いです。
この後、自分たちのせいでシェリーが死んでしまったという罪悪感に苛まれる展開も辛かったです。

バッドエンドルートより。
一体何のお肉なんでしょうか、気になります!
アミルスタン羊かな?

読んでいて悲しくなったエマの心の中の独白。
友だち0人は悲しいです。
家族の登録くらいはあることを願います。

もしノアが、みんなのストレスを少しでも減らせるよう、咄嗟にこの魔法を使ったのだとしたらと思うといたたまれなくなります。

プレイヤー自身にボタンを押させる演出が、とても重く響きます。
文章を読んでいるだけでみんなが死んでいくのではなく、自分自身が処刑したんだという気持ちにさせてきます。

アリサがチョロそうだと判断するや否や、「必要なんだ」と繰り返すエマが少しいやらしく見えました。
もちろん周囲に煽られての行動ですが、アリサはこういう言葉に本当に飢えていたのだろうと感じます。

普段ニコニコしているキャラが、急に真顔になると怖いですよね。
シェリーはとても好きなキャラの一人ですが、まさか犯人になると思っていなかったので驚きました。
探偵役や相棒的なキャラは最後までパートナーでいると思っていました。

魔女じゃない状態なのに人を殺したのは異常だとか、殺しても何も感じないとか、色々言われていましたが、本当は心優しい子だということをエマが必死で叫ぶシーンに心打たれました。
さすがのゴクチョーも、この後は後味が悪く気まずそうだったのが印象的でした。

炙りビンで何かとネタにされるシーンですが、いきなりここでガラス職人を目指し始めるという発想に笑ってしまいました。

か弱い声で、みんなの害になることを一生懸命頑張っていました、と白状するのがじわじわ来ます。

故あらば殺しそう。

前半ラストシーンは、何だか唐突な感じがしましたが、こういうバッドエンドかーと感じていました。
エマの苗字の「桜羽」にぴったりな雰囲気のフォルムだなと思いました。
後半

こういう展開の仕方かと感心しました。
近年、何度も繰り返し頑張るループ物の作品は増えていますが、本作のようにそこをメインに据えていないのはちょっと珍しいと感じました。
ヒロが何度もやり直して頑張るというストーリー運びではなく、序盤で殺されてしまったキャラクターたちに脚光を浴びせ、掘り下げる舞台装置という控えめな使い方をしています。
初日で死んでしまったせいで情報の優位性が無く、強くてニューゲームにならないところが新しいです。

主役級ではないキャラなのに、第四の壁を超えてプレイヤーに語り掛けてくるのが斬新でした。
自分の主観視点で死に戻っただけのヒロと違い、ココの方がよりプレイヤーに近い存在とも言えます。
かなり情報的に優位だったはずなのに早々に退場することとなるのが面白いところです。

さあ黒幕とどう戦っていくのだろうと思っていたら、あっさりと最初の被害者になってしまいました。
後半でも意外性のある展開は健在で、なかなか退屈させてくれません。

前半でエマが主人公だったときは、自分自身が疑われる展開は少なく、ダンロンの苗木君的立ち位置でした。
しかしヒロはほとんど最有力容疑者という立場からスタートし、証拠探しもまともにさせてくれません。(証拠探しが無いせいでテンポは良いと感じます)
そういう意味で、逆転裁判的な裁判運びが綱渡りのようでスリリングでした。
口八丁手八丁でどうにか流れをコントロールしていくのが面白かったです。

前半ではさっさと退場してしまったレイアですが、後半ではポンコツ相棒として魅力のあるキャラクターになっていて好きです。
ヒロでさえ呆れさせ、啞然とさせてしまうのはもはや才能です。
度し難い…!

この白々しいセリフを臆面なく吐けるふてぶてしさが魅力だなぁと思います。
この振舞いが「正しい」と言い切れるメンタルは強いです。

マーゴが狼狽えるシーンは貴重なので保存しちゃいます。
15歳とはとても思えず、妖艶なお姉さんという感じでした。
議論では強敵感があり、さすが詐欺師と感心しました。

ついに犯人視点からの裁判か⁉ とワクワクしましたが、そうはなりませんでした。

ヒロは良くも悪くも「正しい」ものを好むので、前向きに頑張っている人の努力にちゃんと敬意を払っているのが好きです。

何だかんだで、アリサも巻き込むくらいポジティブな力で巻き込むのはレイアの人柄なのかなと思います。
まぁアリサも根はいい奴なので意外ではありませんが。

自分が一番目立つタイミングで、重要な証拠を伏せていたレイア。
断じてそんなことはあると思います。

ノアがニヤリと臨戦態勢に入る感じ、いいですよね。

バッドエンドルートですが、まぁ、これはこれでお似合いなのではと思います。
個人的には、本編のようにヒロがレイアをボロクソに言っている構図の方が好きですが。

確かに見た目も態度も魔王だなぁと思い、ぴったりな形容に感心しました。

大魔女様を復活させるため、黒幕という本性を曝け出しつつも、前半序盤のようなサポート役に原点回帰するのが面白い構図でした。
僕だけかもしれませんが、正体が明らかになる前後で、メルルに抱く印象が特に変わらないことが不思議でした。
目的に対して一貫性があるからかもしれません。

魔王からも、あらゆる意味でモンスターという賛辞を贈られるレイアさん、さすがです。

なんか言い訳が可愛かったのでスクショしてしまいました。

シェリーが真顔で喋っているだけで、襟を正して聞いてしまいます。
いつもの笑顔でハイテンションで賑やかに喋っていると聞き流してしまうのですが。

魔女裁判の中の議論で戦ってきたヒロたちが、ラスボスと戦う方法もまた裁判というのが熱いですよね。

戯れに裁判に付き合ってくれていたラスボスの論理に、一筋の綻びが見えた瞬間はテンションが上がりますね。
予定調和的な終わり方で後味は良かったのですが、少し拍子抜けしてしまいました。
ダンロンくらい往生際が悪く粘ってくれると倒したときに爽快感があるのですが、本作は同情の余地があるのでこれくらいが良い塩梅かと思います。
ちなみに僕のお気に入りのキャラは、シェリーとレイアです。

To be continued…?
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