はざまたそがれ(フリー・レトロホラーノベル)紹介・感想

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美麗で臨場感あふれるサウンドを駆使しているわけではなく、味のあるドットで描かれたグラフィックと、ファミコン風のレトロBGMが特徴の、独特な雰囲気溢れるホラーノベル。
それが本作「はざまたそがれ」です。
「もぐらゲームス」様の記事で本作を知り、今回プレイしてみました。
プレイ時間はほぼ公称通りの8時間で、とても面白かったです。

ゲーム概要


本作は、文章を読み進めていくノベルゲームです。
選択肢の無い一本道のストーリーで、途中でセーブすることもできません。
しかし本作は10分ほどの短いエピソードで構成されており、エピソード終了ごとに進行状況は保存されます。
従って、続きからプレイする際は、各エピソードの最初からプレイすることになります。

エピソードの区切り画面では、今までのあらすじが表示されます。
一話終わるごとに、このような画面が挿入されるため、自然とメリハリをつけてプレイできるので、テンポが良いです。
プレイ再開時もあらすじを読めば、どのような展開だったかを思い出すことができます。


本作で特徴的なのは、メインのゲーム画面です。
キャラクターの顔グラフィック、会話、地の文と、ウィンドウが区別されています。
これによって、地の文と人物の会話がはっきりと区別されるため、新鮮なプレイ感覚があります。
僕の好きなアドベンチャーゲーム「シルバー事件」(現在はPC版も販売中)の「フィルム・ウィンドウ」を彷彿とさせるようなデザインです。

画面の色々な場所に文字が表示されたり、画像の変化があるので、慣れないと少し見にくいと感じるかもしれません。
しかし、淡々と同じところに文字が表示され続けるより刺激があるため、プレイを飽きさせないための刺激になっています。

また、本作では難読漢字が多用され、常用ではない(あるいは読みにくい)漢字に関しては、色付きで表示されます。
画面の「辞書」をクリックすることで、読み方とちょっとした豆知識を確認することができます。
他にも、文字自体が動いたりする演出もあり、細部に色々な作り込みが仕込まれています。
例えば、本文中の「浮上」という文字が、ウィンドウの中で文字通り浮かび上がったりするなど、面白い試みでした。

ちなみに、文章を読み進めるには、画面右下の「捲られている本」をクリックが必要ですが、ここにポインタを置いた状態でのEnterキーでも可能です。
キーボード派の人はご活用ください。

感想(ネタバレ無し)

本作はエピソード数は45、プレイ時間約8時間と、アドベンチャーでは長編のボリュームです。
しかし紹介に書いたように、エピソードごとにちょうど良い部分でまとまっているため、非常に読み進めやすいと感じました。
人間が本当に集中できる時間は30分程度と聞いたことがありますが、本作のエピソードは、長くても大体15分程度で読み終えることができます。
そのため、エピソードが終わる度に「少し物足りないな」という気持ちになり、最後まで高いモチベーションを維持できた一因だと感じます。
(最近では「死月妖花」というフリーの長編ノベルゲームも、似た仕組みが採られていました)

もちろん、ストーリーそのものも面白く、読み進めるごとにじわじわと引き込まれました。
物語の好き嫌いは、個人の好みによるところもあるでしょう。
しかし恐怖や笑い、悲しみ、喜び、そして驚きなど様々な要素が盛り込まれており、全体を通して楽しむことができました。
少しでも気になった人は、まずは最初の数エピソードだけでもプレイしてはいかがでしょうか。

感想(ネタバレ有り)

作品の世界に浸ることができて、とても楽しかったです。
序盤は、不気味な異世界に迷い込んでしまったという怪奇現象ものかなと思っていました。
しかしそれにしては、陽子が様々な現象を論理的な思考から検証しており、単なる古典的な怪奇ホラーとは様子が違うぞ、と思うようになってきました。
そして咲の登場により世界の仕組みがあっさりと明かされ、しかもその仕組みが作品イメージとは違って、SFチックな世界設定で驚きました。

陽子もかすみも、かなり論理的な思考を持った登場人物なので、SF的な舞台装置が明らかになってからは、よりしっくりと来ました。
その後の物語の展開や仕組みも、論理的で納得がいくものであり、敵勢力の出現に関しても、上手いこと理由付けがされているなと感心してしまいました。
僕がよくホラーもので感じる「何でコイツはこんな行動を執るんだ」という思いが湧くこともなく、どうなっていくんだろうというワクワクが最後まで持続しました。

終盤では騙し合いのようなトリックバトルもあり、超常現象的なバトルもあり、かなり盛り上がりました。
そして「終幕」でのゾクっとするラストも最高でした。
「その後」で描かれている続きは、「終幕」で完結している作品とするなら蛇足ですが、続編も期待できる内容なので、単純に嬉しく感じました。

本作で、何が自分の心に響いたか振り返ってみると、それは「友人」というものの描かれ方だったと思いました。
最初は奇妙な世界に迷い込み、お互いビジネスライクな協力関係でした。
それから困難を乗り越え、段々と友情が育まれていく丁寧な描写が、シンプルに心に響きました。
思えば黒幕の目的も「友人」でしたし、本作の主題は何かと聞かれたら、僕は「友人」というものであると答えるでしょう。

余談ですが、第三十三話のタイトルの下の句「花と雨と太陽と」を見て、何だか嬉しくなりました。
というのは、僕の大好きなPS2のゲームに、「花と太陽と雨と」という似た名前の作品があるからです。
僕はその作品の開発会社、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が関わった作品が好きなので、何となく「はざまたそがれ」も、その作品群に関連付けて考えてしまいました。
「トワイライトシンドローム」の学校ホラー要素、「ムーンライトシンドローム」の満月と人間の怖さ、「シルバー事件」のフィルムウィンドウ、そして「花と太陽と雨と」の名を冠する登場人物たち。
単なる偶然だとしても、好きだった作品への気持ちが呼び起こされ、何だかセンチメンタルな気分になりました。

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コメント

  1. 夜行小十具 より:

    突然お邪魔して申し訳ありません。
    はざまたそがれ製作者のことぐでございます。

    サイトでの発信、及びダウンロードサイトへのレビュー有り難うございます!
    記事を拝見した限り楽しんで読んでもらえたようで何よりです!
    謹んで次回作以降の制作意欲の糧とさせていただきます!

    本当に有難うございました!

    • losspass より:

      コメントありがとうございます!
      記事を読んでくださり大変恐縮です。
      とても楽しくプレイさせていただきました。
      いちプレイヤーとして、次回作を楽しみにしております。

      素晴らしい作品をありがとうございました!