麻雀戦術本「世界最強麻雀AI Suphxの衝撃」(著:お知らせ氏)紹介・感想

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前書き

「Suphx」(スーパーフェニックス)とは、ネット麻雀サイトの天鳳で対戦を繰り返した、Microsoft社の麻雀AIです。
このAIは天鳳の4人打ち特上卓・東南戦で5000試合以上を戦い、安定段位8.75段・十段到達2回という成績を出しています。
これは圧倒的な成績であり、麻雀の打ち方について、様々な部分で学ぶべき点があるAIだと考えられます。
本書「世界最強麻雀AI Suphxの衝撃」は、このAIの打牌に注目し、麻雀における様々な判断基準の「正解」を探りつつ、役に立つ戦術書となっております。

著者は第14代天鳳位(4人打ち)の「お知らせ」氏です。
本書のあとがきにも書いてありますが、本書はAIの研究本ではなく、麻雀の戦術本として役立つよう意識して書かれています。
Suphxの判断をひとまず正解とみなして、AIがどのような基準で判断しているのかを探り、その関連する事項について解説しています。
内容はやや上級者向けで、天鳳の鳳凰卓レベルの人向けの内容なのかなと思います。

僕は、天鳳で約1500戦・安定6.1段ほどの成績で、鳳凰卓で打てるようになったのに、負けるのが怖くて打てていないレベルのプレイヤーです。
本書では、自分では対局中に考えてもいなかったような内容が当たり前のように登場し、レベルの違いが感じられました。
しかしそれと同時に、また新たな考え方を学んでいきたいという意欲が湧いてきたのも事実です。
知らず知らずのうちに、漠然と打つようになっていた自分の頭に、刺激的な内容の本でした。

本書の内容

さて、まずは本書の目次について紹介していきます。
目次については、Amazonの紹介ページでも無料で閲覧することができます。
(だから載せてしまっても良いだろうという判断です)

本書は、大きく4つの章から成っています。

第1章 強くなること
1 Suphxの実績
2 誤ったAI観から脱却せよ
3 麻雀を学ぶこと
4 引き出しを増やすこと
5 ノーミスであること
6 牌効率
7 麻雀は流れ第2章 スタンダードな押し引き
1 どうでもいい手牌
補講Ⅰ 手配価値認識
2 対副露の引き出し
3 浮き牌
4 半端押し
補講Ⅱ 条件付き牌理
5 終盤の選択
6 点数状況
7 テンパイからのオリ
8 対他人数
Misscellaneous notes(雑記)① ツモ切りリーチ第3章 中盤のスリム化
1 押し引き構想
2 スリム化の基本
3 パンパン構え
4 スリム化の引き出し
補講Ⅲ 中盤のスリム化におけるポイント整理
5 その他中盤の手順
Misscellaneous notes② Suphxの誤打第4章 序盤の方針
1 5ブロックと+α
2 4ブロック手順
3 一色手順
補講Ⅳ 序盤は打点に寄せる
4 七対子手順
5 生牌字牌
補講Ⅴ 生牌
6 序盤におけるスリム化
7 その他序盤の手順
Misscellaneous notes③ 現物食い替え
Misscellaneous notes④ 一発消し

本書では、それぞれの項目について、まずSuphxの実際の打牌画像が載せられており、それについての解説が書かれています。
たとえるなら、Suphxという名人の対局を、天鳳位のお知らせ氏が解説するような形式です。
何切る風の問題集のように使うこともできますが、そういった使い方よりも、「どんな判断基準を取り入れるべきか」という点に注目すると良いかと思います。
何が正解なのかを暗記するのではなく、実戦で使っていけるような形で理解することが重要です。

本書の概要と感想

各章について、何が書かれているのかという点や、読んだ感想を交えて書いていきます。
興味を持った項目があれば、ぜひ購入して読んでみてください。

第1章 強くなること

第1章は、Suphxの強さや、麻雀で強くなることはどういうことなのかなど、主に本書の前提などが語られています。
麻雀で強くなるにはどういうことが必要なのかなど、麻雀全般への言及があります。
牌効率ひとつとっても、牌の一つ一つの価値や機能など、自分の理解の浅さを突きつけられる項目でした。
この章を読むだけで、本書が上級者向けであるということが感じ取れるのではないでしょうか。

第2章 スタンダードな押し引き

この章で語られているのは「スタンダードな押し引き」とのことですが、僕がイメージしていた内容とは異なるものでした。
僕の認識だと、押し引きというものは、他家の立直や副露に対して、押すのか引くのかというものでした。

しかし本書での押し引きというのは、僕がイメージするよりも、かなり早い段階から意識されるものでした。
さらに、押すにしても、押し方・押す枚数など、考慮する点は多岐にわたります。
今まで考えもしなかったチェックポイントについて、気付きが得られるという意味で、とても役に立つ内容です。

第3章 中盤のスリム化

この項目を見てもわかるように、他の章に比べて第3章は、やけに具体的なタイトルです。
それだけ書かれている内容が、現在のスタンダードとは異なっているからかもしれません。

Suphxの特徴の一つとして、将来危険度が高くなりそうな牌に対して、厳しめに評価するという点が挙げられます。
この章ではそれに関連して、先切りなどのスリム化に関する点や、その際に考慮する判断基準についての考察がなされています。

危険牌を先に処理していくという方針は、失点を防ぐために必要なことです。
Suphxは、失点を防ぐことについて、かなり早い段階から考慮しているように見えます。

第4章 序盤の方針

点数状況や配牌の違いなどから、Suphxがどういった方針で手を進めていっているのかを考察しています。
我々人間が認知しづらいような、かなり先のことを見据えた打牌もあるようです。
以前話題になった「AlphaGO」というGoogle製の囲碁AIも、一見我々には理解不能な指し方でも、後々に重要な意味を持つことがありました。
こういった点は、人間が知覚するのはなかなか難しい部分もありますが、頭に入れて置くことで、引き出しができるのだと思います。

あとがき

「世界最強麻雀AI Suphxの衝撃」について、大まかに紹介しました。
僕にとってはレベルが高いと感じる内容ではありましたが、トップ雀士の考え方を一部でも知ることができて、大変ためになったと思います。
最近の自分は、思考を単純化させ過ぎて、雑に打ってしまっているということを強く感じました。

技術を習得しようとするとき、お手本の模倣をすることで、とりあえず近づくことができます。
お手本と同じような打ち方を、無意識レベルで打てるように、継続して実践しなければいけないな、と感じる一冊でした。

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