医療機器商社(ディーラー)の仕事 問題がある「立会い」の実例

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医療機器業界で働くディーラーやメーカーであれば、「立会い」がどういうものかはご存知だと思います。
しかし、病院関係者に聞いてみると、立会いの規制について知らない人が多いような印象を受けます。
そして、立会いが規制されている現在でもなお、公正競争規約に違反する立会いは多く行われています。

今回は、僕自身が問題だと感じる立会いの類型について書いていこうと思います。
賛否両論はあると思います。
なお、有償での立会いについては特に問題は無いため、この記事内での立会いとは、すべて無償の立会いを指すものとします。

 

sasint / Pixabay

 

業者側が守られるパターン

立会いが規制されることによって、業者側・病院側の両方を守ることに繋がります。
具体的にどういう場合に、どういう意味で守られるのか書いていきます。

例としては、病院側が製品の使い方を覚える気が無く、毎回業者の立会いを無償で求められる場合があげられます。
通常でしたら立会いは、新製品を導入して1診療科4回までの立会いしか認められません(導入4ヶ月以内)。
それなのに毎回、「不安だから立ち会いをして欲しい。立会いしないのなら使わない」などと求められるケースがあります。

この場合、業者側は毎回立会いを求められ、断ろうものなら自社製品が使われなくなってしまうリスクがあり得ます。
こういった場合は、公正取引規約の立会い回数制限を盾に、断ったり有償化することができます。

病院やドクターの考え方によりますが、立会いがあったほうがスタッフとしては心強いので、毎回立会いをして欲しい気持ちは理解できます。
しかし本当にいつまでも立ち会ってしまうと、どうせ教えてくれるので、覚えようとする気がなくなってきてしまいます。
また、立ち会う業者がその場に拘束されてしまうため、長時間労働の温床となります。

売り上げを獲得するためのメーカー立会い

これは、病院側が嫌がる場合もある立会いの例です。
売り上げが足りないメーカー営業が、即効性のある解決手段として、立会い営業に走ってしまう場合です。

例えば、メーカーがドクターに、何らかの症例に対して立会いをしたいとお願いをします。
立会いの口実は、「どういう手技を行っているのか勉強したい」や、「もし不慣れなスタッフがいればレクチャーをしたい」など、当たり障りのない理由です。
このようにしてメーカーが立会いに来るとき、ドクター側に大きなこだわりが無ければ、「せっかく立会いに来てくれるなら、今回はこちらのメーカーの商品を使うか」と、気を遣ってくれる場合があります。

もちろんメーカー側は「うちのものを使ってください」と、直接的にお願いするわけではないのですが(する人もいますが)、ドクター側が勝手に忖度してくれるのです。
こういった行為の回数が、許されている回数を超えた場合は、「不当な取引誘引行為」と見なされ、制限の対象となります。

ドクターなどの病院側が嫌がっていないのであれば、この問題は表立ってきません。
しかし、あまりにも立会いが多く嫌なのであれば、規約を盾に断ることができます。
昔ながらのドクターはともかく、最近の若いドクターは、優しい人が増えてきているように感じます。
日ごろお世話になっているメーカーが売り上げに困っているとなると、使うのは嫌だとはっきり言えない人はいます。

しかし、こういう行為が横行したからこそ立会いの規制が出来たわけですから、それを無視するような業者は問題があるということになります。
競合するメーカーが採用になっている病院では、立会い合戦のような様相を呈している場合もあります。

 

スタッフ業務の肩代わりに当たる立会い

これは、カテ室でよく見られる行為です。
立ち会いそのものに関しては、今まで書いてきたような制限の範囲内であれば問題はありません。

問題は、その行為の内容です。
患者に関わる清潔野での医療機器の操作については、もちろん関連法規に引っかかるためアウトです。
しかし、パッケージを開封してスタッフに渡すなどの行為も、本来は外回りスタッフが行うことであるため、アウトとなり得ます。

また、どういうコイルをいくつ使ったか、ステントやバルーン、ガイドワイヤーなどをいくつ使ったかという記録なども、業者が行っている姿をよく見ます。
これ自体は、サービスの一環として行っている業者は多いですが、この行為も「立会い」と見なされる場合があります。

手術室では当たり前にスタッフが行っていることであっても、カテ室では業者が肩代わりしている光景をよく見ます。
これが良いのか悪いのかは、それぞれの立場で様々な意見があると思います。
しかし僕自身は、この作業のためだけに立ち会うのは非効率なので、スタッフにやってほしいと思っています(完全に業者側の意見ですが)。

 

今後の立会いのあるべき形

立会いのあるべき形は、やはり新規採用品の初期導入時、まだスタッフが慣れていない場合に限定するべきだと思います。

最近は、有償の立会いは増えてきていますが、ほとんど形だけの有償化であり、安価な価格設定のところが多いです。

しかし今後、償還価格がさらに下落していき、メーカーの値上げ幅も大きくなってきています。
医療材料そのものを値上げしにくくなっている近年、立会いの料金もどんどん高くなっていくのではないかと思います。
個人的には、メーカーの修理出張費くらい高額にして、1時間当たりいくらで請求してもいいのではと思います。

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