プロ野球での「左右病」について考える

野球
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プロ野球で通用している常識の一つに、右投手には左打者が有利、左投手には右打者が有利、というものがあります。
例えば左打者の視点から見たとき、右投手は球の出所が見えやすいためという説明をよく耳にします。

しかしネットの普及により、各選手の左右別の対戦成績は容易に確認できるようになりました。
その結果、そういった傾向はあるものの、選手によっては当てはまらない場合も多いということがわかってきました。
それなのに、どうして右投手には左打者・左投手には右打者という起用方法は無くならないのでしょうか。
今回は、いわゆる「左右病」について考えてみようと思います。

左右病とは

前述したように、右投手は右打者、左投手は左打者が得意という傾向があります。
そのため相手投手が右なら、攻撃側は左打者をぶつけるのがセオリーということになります。
左右病とは、そのセオリーに固執する采配を揶揄した表現で、主にネットで広まった表現のように感じます。

例えば相手の先発が右投手であった場合、スタメンに左打者をたくさん並べるのがセオリーです。
しかし右打者であっても、右投手を得意にする打者は多く存在します。
それなのにそのデータを無視して、頑なに左打者をぶつける監督は確かに存在します。

こういった采配をする監督に対して、「○○監督はひどい左右病だ」などと批判したりします。

左右病の問題点

対右、対左のデータを無視している

では、左右病の何がいけないのでしょうか。
一つは、実際のデータを無視して、かえって不利な采配をしてしまっているということでしょう。
右打者であっても右投手を得意にしているのであれば、その選手をそのまま使えばよいのです。
それなのに、右投手を苦手にしている左打者を送り出してしまうのは、まったく意味の無いことです。
これが最大の問題点と言えます。

同じ打ち方の打者が続くと投手が投げやすい

二つ目に、右投手に対して左打者をずらっと並べると、相手投手が逆に投げやすくなってしまうという問題点です。
投手は、打順ごとに左右が変わる並びだと、なかなか慣れずに投げにくいそうです。
物理的な位置でいうなら、右打者の外角は、左打者の内角ということになります。
人間、同じ位置に投げ続けていると、段々精度が上がってきます。
いくら右投手に左打者が有利と言っても、左打者ばかり並んでいれば、「良いところ」投げられる精度が増してきます。
そのため、同じ左打ちを並べるよりも、むしろ交互に並べたほうが理想と言えるでしょう。

左右にこだわる理由

左右病の悪い点を述べて来ましたが、左右にこだわる正当な理由は、もちろんあります。
最初に書いたように、右投手の球の出所は、左打者から距離が遠い分、左打者の方が見えやすいと言われています。
それ以外に理由はあるのでしょうか。

外角のスライダーを封じる

野球経験者に聞いたところ、外角のスライダーを封じることができるのは有利と聞いたことがあります。
変化球の中で、最も代表的で有効なものといえば、スライダーがあります。
右投手が投げるスライダーは、利き手と逆方向に変化していきます。
右打者が相手であれば、外角へ逃げるボールとして高い空振り率の変化球です。

そのスライダーが外角へ逃げる球ではなく、内角に曲がってくるのであれば、体の近くに来る分、カットなどで対応しやすくなるそうです。
相手投手の利き腕と反対の打者が有利な理由は、球がよく見える以上に、これが大きな理由ではないかと思います。

セオリーを無視して失敗すると批判される

右投手には左打者、左投手には右打者が有利というセオリーは、非常に根強いものがあります。
そのため、相手が右投手なのに右打者を出して失敗すると、非難を受けることが多いのではないでしょうか。
ラミレス監督、ボビー・バレンタイン監督などの外国人監督であれば、あまりそのようなことは気にしないのでしょうが、周りの声を気にする監督だと、どうしても難しいのかもしれません。
その打者が有利であるというデータがあれば、正しさは証明できると思いますが・・・

役割が決まっているほうが対策しやすい

スタメンで出ている選手であればともかく、控えの選手であれば、左右を意識した場面で起用されることが多いと思います。
右打者であるのなら、相手が左投手のときに代打で出てくることが多いでしょう。
このように、自分は左投手を相手にすることが多いと自覚することで、それに対して対策や準備をしやすいということがあるのかもしれません。
ワンポイントの投手も同様で、自分が相手にすることが多い打者を自覚することで、慣れなどにより対策できるのではと思います。

まとめ

左右を気にするには、それなりの理由があると思います。
しかし実際に得意としているデータがあるのなら、こだわる必要はないのではと思います。
それにこだわってしまい、かえって悪い采配をしてしまうならば「左右病」という悪癖になるのだと思います。

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コメント

  1. GG より:

    左右病を批判するプロ野球解説者でも、自分が監督になると左右病的起用を行います。
    理由はベンチに居る、使いたい試したい野手を使う口実として成立しているからです。
    外される野手のほうへの口実にもなっていますので、
    起用される側の野手の、日本人的な申し訳なさの気持ちも軽減できます。

    このご時勢、データを見ないわけはありません。
    メディアで批判されても、監督はそれ以上に、
    多くの野手を実戦で使ってみたいということです。

    • losspass より:

      コメントありがとうございます。
      今まで、有利か不利かという視点だけでしか考えていなかったので、胸を衝かれました。
      左右別の対戦データから、本当は有利なのか不利なのかを分かっていながら、活用していないのであれば少し勿体無く感じてしまいました。

      しかし確かに、試してみたい選手がいるときの口実として考えると、今まで疑問だった采配にも納得できる部分があります。
      勉強になりました。

  2. ける より:

    だいぶ前の記事ですが、一言。

    左右病なんか見たことないですよ。
    だって相手の先発投手によって4番バッターが変わることはないでしょ。
    変わるのはクリーンアップ以外の1人、どんなに多くても3人程度。
    しかも、打ったり打たなかったりの選手ばかりです。

    3割バッターが9人揃ったら、怪我でもない限りは、相手先発の左右に関係なくその9人が先発ですよ

    あと、監督が使ってみたいとか何言ってんですか?
    監督を会社で例えると、1年契約の課長みたいなものです。
    好き嫌いで仕事を割り振って、結果が出なければ背任で首です。
    外された方だって納得できないでしょ。
    結果が出てないなら、俺が出てもよかったと思うだろうしね。

    • losspass より:

      貴重なご意見、ありがとうございます。
      今後も、誰にでも内容が理解できる記事を書く努力を続けていきます。