ミステリー・アリーナ(小説・深水黎一郎)感想

前書き

今回、初めて深水黎一郎さんの作品を読みました。
本作「ミステリー・アリーナ」の文体が、非常に軽やかな文章で読みやすかったため、若い人だと思っていました。
しかし調べたところ、現在56歳の方で、2007年から活動しているベテランの方だったので驚きました。
本作品の斬新さと緻密さにも驚かされましたが、ベテランの作家がこのような若い感性を持っていることにも驚かされました。
登場人物の一人である司会者の樺山の話し方などは、ネットスラングなども意識した口調も盛り込まれているので、てっきり若い人だと思っていました。

本作概要と見所

本作は、推理合戦のテレビ番組を舞台としたストーリーです。
15人の回答者たちが、番組内でストーリーを見ながら、それぞれ犯人が分かった時点で回答していく作品です。
物語の節目でチェックポイントがあり、そこで回答できる人回答するというシステムです。
正解者には莫大な賞金が支払われますが、正解者が複数いた場合、回答が早かった参加者に支払われるので、早い方が有利ではあります。
ただ、後から回答すれば、その分だけストーリーの先まで読むことができるため、推理のためのヒントという面からは、後から回答した方が有利ということになります。

見どころは何といっても、回答者が犯人を指名する場面と、その根拠を答えていくところです。

回答者たちはみんな筋金入りのミステリーオタクたちで、こじつけのように感じられる推理でも、一応矛盾なく聞いていられるのが素晴らしいと感じました。
よくもまあ、こんなに色々なことを考えられるものだと感心しますし、呆れもします。

回答者が回答をすると、すぐにそれを否定するかのように本編が進んでいきます。
回答している間は、非常に納得できるような内容だったにも関わらず、すぐにそれを否定される描写がなされるのは、皮肉が効いていて面白いです。
そのあたりの理由についても、ちゃんとした理由があるため、ただの多重解決の羅列にならずストーリー性が付与されているのは好感が持てました。

物語終盤で樺山が言うように、ミステリーというのは、解決がなされるまでは無数の解答が存在し得ます。
どんなにこじつけのような推理であっても、それを否定する描写がないのであれば、正解は無限に存在します。
しかし、ミステリーだけは正解を提示するということが義務付けられている作品です。

本編の描写が進んでいくにつれて、どんどん可能性は限定されていくため、使われるトリックは叙述トリックが多くなっていきます。
色々なパターンの叙述トリックを目の当たりにできただけでも、非常に面白かったです。
ジャンルとしては、かなり挑戦的なミステリになっているように感じます。
本格ミステリに対しての複数の推理を楽しむ、メタ的なミステリと言えばいいのでしょうか。
「うみねこのなく頃に」のような楽しみ方に似ているのかもしれないと感じました。
オーソドックスなミステリに飽きて、斬新なミステリを求めているであれば、とてもお勧めできる作品です。

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