CyberRebeat(フリー・ビジュアルノベル)紹介・感想

ゲーム
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前書き

「ハッキング」をテーマにしたヴィジュアルノベルということで紹介されている記事を読み、興味を持ちました。
ハッキングというと、どうしても一昔前の映画や漫画での描写を想像してしまいます。
キーボードをカタカタして、画面に進行状況を示すバーが100%になり、「SUCCESS」とか出てハッキング成功、というイメージのものです。
本作では、従来のそういったイメージを塗り替えるような、リアリティのある細かな描写がなされています。
僕は専門家ではないので、これらの描写がリアルなものなのかどうかは分かりませんが、とても興味深く読み進めることができました。
パソコンやネットの仕組みに全くの興味がない人は厳しいかもしれませんが、少しでも興味がある人なら楽しめると思います。

フリー版のダウンロードはこちら(「ふりーむ!」作品ページ)
CyberRebeat

ゲーム紹介

本作は、ビジュアルノベルとしては長編の部類に入ると思います。
選択肢はなく、一本道で読み進めていく形式です。
クリア時間は、正確には測っていませんが8時間~10時間くらいだと思います。

操作の部分で一つ残念だったのは、マウスの左クリックでしか読み進められないという点でした。
クリックだけだと疲れるので、出来ればエンターキーやホイールでも読み進めていきたかったです。


本作品は、ver2.0がフリー版として無料でダウンロードできるようになっています。
しかしSteamではver3.0が有料版として販売されています(2020年4月現在で1010円)。
シナリオ部分は変わりませんが、有料版では英語との切り替えが可能だったり、ギャラリーモードなどの機能が追加されています。
詳しくは、公式ホームページに比較が記載されているので、興味がある方はご確認ください。

さて、本作は話の進行に伴って、人物の視点が変わっていきます。
最初の視点は「ヒロ」という男性の視点から始まります。
まずこの人物からして、素性がはっきりしません。
ちゃらんぽらんな言動が目立つ人物で、その語り口調は「CROSS † CHANNEL」の黒須太一のようです(知らない人はすみません)。
軽妙なボケや語りを毎回繰り返すので、人によっては面倒くさい奴だと感じるかもしれません。
ただ、そのようなパートが目立つのはストーリー序盤に集中しており、次第にシリアス度は増していきます。

序盤のうちは、専門用語に対しては理解できるように、登場人物が説明してくれます。
ただし、中盤から後半にかけてのハッキング(本当はクラッキング)合戦では、いちいち説明がないシーンもあるので、注意が必要です。
もっとも、そういったシーンでは、専門用語が理解できなくても本筋にはあまり影響はないので、わからない語句は聞き流してしまって良いかもしれません。
パソコン関係に全く興味がない人が本作を手に取ることは少ないとは思いますが、本当に興味がない人にとっては、少しハードルが高いかもしれません。

また、本作ではネットが舞台になる場面が多く、ネット上での会話や掲示板ではネットスラングも多く登場します。
本作は2015年に投稿されたようですが、ネット上での会話はそれほど古臭くは感じられず、かなり自然に感じられました。
ネット黎明期と現在のの言葉遣いを比べるとかなり変わってきていますが、現在と5年くらい前だとあまり古く感じないなと思いました。
ネットスラングの変遷速度が緩やかになってきているのかなと感じます。

感想(ネタバレあり)

これ以降は、ストーリーの内容に関わるネタバレがあるので、プレイしようと思っている人は読まないことをお勧めします。

長い作品ではありますが、中盤以降は物語が加速していき、一気に読んでしまいました。
後半は登場人物同士が繋がっていき、一堂に会する辺りはクライマックスという感じで、とても盛り上がりました。
フィクションだと分かってはいても、おそらく現実に即している側面もあるので、ネットを使用する怖さを改めて認識した部分もありました。

ただ、語り手の視点が変わるとき、同時に時間軸も変わっているため、少しわかりにくく感じることもありました。
はっきりと時間を記さないのは物語上の演出なのでしょうが、時間軸が何回か変わるので、少し混乱してしまいました。

最終的に黒幕的な組織は登場しますが、それが実態を持って登場するわけではないので、独特の恐怖感がありました。
使用されていた兵器「karma」により、どんどんハッカーたちがログアウトしていくのは、なかなかの恐怖でした。
序盤はどのように放火殺人を行っているのだろうと、それを推理するミステリ的な要素もあるのかなとも思っていました。
しかし正体が判明してしまうと、単に超兵器による殺人だったということで、何だか拍子抜けした感がありました。

全体的に主人公陣営は有能な人物ばかりなので、CTF参加時のシーンなどは痛快で楽しかったです。
侮っている敵相手に、圧倒的な実力で勝利する主人公陣営というのは、どんな作品でも面白いものです。
これほどまでに有能な人物が揃っていても、相手は恐ろしいイメージのままなので、そのあたりの緊張感は最後までありました。

自分の理解力のせいかもしれませんが、登場人物たちの空白の期間の動向など、まだ語られていない点や、もう少し説明が欲しいと感じる点も多少ありました。
しかし何にせよ、ハッキング(たぶん本当はクラッキング)という難しい専門的な分野について、真正面からかみ砕き、一般の人にも楽しめるような題材として描き切ったのは、本当に凄いなと思います。

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