漫画「ヴラド・ドラクラ」(大窪晶与)紹介・感想

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15世紀、ルーマニア地方にあったワラキア公国に焦点を当てて描かれた漫画「ヴラド・ドラクラ」の紹介記事です。
ワラキア公国の君主と言えば、とにかく「ドラキュラ公」「ヴラド・ツェペシュ」「串刺し公」という異名で有名な人物です。
「ドラキュラ=吸血鬼」というイメージが有名になってしまい、一般的には血生臭いイメージが強いかと思います。

本作品では政略や知略を駆使し、大国の侵略から自国を守っていく名君というように描かれています。
この時代・この地方を扱った漫画をあまり知らなかったためか、とても新鮮で面白かったです。
(2021年11月現在、既刊5巻)

概要

ジャンルとしては、政争と戦争を描いた歴史漫画ということになると思います。

舞台となるワラキア公国では貴族が実権を握っており、健全な政治が行われておりません。
主人公であるヴラド3世は君主ですが、君主の入れ替わりが激しいという理由もあり、実際は貴族で構成される評議会が権力を握っています。
お飾り的な立場であるヴラドは、貴族に対して従順な態度を見せつつも、心の中では、政治改革をしたいという思いを秘めています。
物語開始時は、まだ自らの地盤が弱く、表立って貴族と対立できない立場ですが、少しずつ頼れる側近を増やしていきます。

1巻の雰囲気は、「新人社長が、腐敗した経営陣(政敵)を巧みにやっつけていき、経営改革をしていく」というような感覚です。
貴族たちと表立って対立するようになってからは、それまでとはまた違うスリリングな読後感に浸れると思います。

作者の大窪晶与氏は本作がデビュー作のようですが、歴史系のジャンルにマッチしたシリアスな画風です。
特にクセがある絵ではないので、違和感なく話に入っていけると思います。

感想(少しだけネタバレあり)

非常に面白い内容で、一気に読んで、その世界に引き込まれてしまいました。
ヴラド3世を、ホラー・ファンタジーの色濃い「ドラキュラ」のイメージと関係なく、しっかりとした「歴史漫画」を描いてやろうという意思を感じました。

穏やかな物腰で高い知性を感じさせるヴラド3世は、これまで描かれてきた人物像とは180度違うイメージです。
時折、手段を選ばない漆黒の意思を感じさせる場面もあり、後に「串刺し公」と呼ばれることになる片鱗は垣間見えます。
しかし、一見残虐に見える手段であっても、最大の効果を得るための冷徹な計算の上で行っているため、決して怒りや憎しみに任せて行っているわけではありません。

有能な人材の獲得、地盤固め、武力の整備と、さながら戦略シミュレーションゲームのような序盤の展開は、読んでいてもワクワクしていきます。
ヴラド3世が、どのような背景で現在の地位に至ったのかということについても、描写されています。
この作品を読む前と後では、自分の中でヴラド3世のイメージは明らかに変わりました。

2019年2月の時点で既刊は2巻ですが、それなりにキリがいいところで終わっています。
史実通りであれば、今後はオスマン帝国との闘いになっていくのでしょうが、ヴラド3世が具体的にどのように方法を使っていくのか、非常にワクワクしています。
とても先が気になるおすすめ漫画です。
中世・歴史というワードが好みの人は、ぜひ読むことをお勧めします。

(2020年2月追記)
3巻では、ついにオスマン帝国と戦争が避けられない状態になっていきます。
しかし、国力では圧倒的に劣るワラキア公国なので、その時間稼ぎと戦力増強のため、手段を選ばない手腕は見事でした。
3巻もいよいよ開戦というところで終わるので、キリはいいところです。
これから本格的な戦いになっていくのでしょうが、おそらく5巻か6巻ほどで完結すると推測します。

(2021年2月追記)
4巻は、オスマン帝国との戦いがメインに描かれます。
国力で劣るワラキアが、オスマンに対抗して善戦しますが、オスマンの策略などにより苦戦を強いられていきます。

(2021年11月追記)
5巻は、オスマン帝国との戦いの決着が描かれます。
「ドラクラ」という名前の元ネタともなったもっとも有名なエピソードが満を持して描かれます。
ストーリー的にはクライマックスと言える巻でしょう。

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