漫画「おやすみプンプン」(浅野いにお)紹介・感想

漫画・アニメ
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先日、土日を使って一気に「おやすみプンプン」という漫画を、全13巻読み終えました。
万人受けする漫画ではないと思いますが、僕は、最後まで読んでしまう魅力を感じました。
自分の感想を整理するために、未読の人に紹介する形で、記事を書いてみようと思います。

作品概要

一見、どこにでもいそうな普通の少年・プン山プンプンの小学校時代~大人になるまでを描いている漫画です。
大きく分けると、小学校時代、中学校時代、高校時代、青年時代に分けられ、時間的にも飛びます。
ただしプンプンだけを描いているわけではなく、彼の周囲の家族や親戚、かつてのクラスメイトなどの成長も描いています。
そのため、群像劇としての側面もあります。

この作品のジャンルは何かと言われると、非常に答えづらいです。
しかし、一つだけジャンルを選べと言われるのなら「恋愛」と答えさせていただきます。
決して恋愛がテーマだとは思いませんが、最初の恋愛(あるいは、恋愛という名の思い込み)から、すべてが始まっていると思うからです。

作品の特徴

主人公の見た目が鳥

この作品の特徴的な点として、主人公のプンプンの姿が、落書きのような鳥の絵として描かれています。
下のような画像です(自分で書きました)。

写実的な絵の中で、プンプンとプンプンの両親、その弟であるおじさんはこのような絵で描かれるため、作品中においては、非常に浮いて見えます。
作中の人物がプンプンをモデルに絵を描いた際、普通の人間の顔の形をしているため、あくまで読者に対してのみ、このように書いているということになります。
その理由として考えられるのは、あまり意味のない見た目にすることで、キャラの見た目ではなく言動に注目させるためだと思います。
普通に人間としてキャラクターを書いてしまうと、読者は、自分とは違う、作品の中の登場人物として認識します。
しかしこのように人間ではないものとして描かれると、プンプンが自分かのような錯覚に陥って、つい自分自身を重ねて見てしまいます。

言いようのないリアルさ

作品に登場する人物たちは、一見まともそうに見えて、みんな狂気を抱えています。
しかしその狂気は、漫画のように誇張された狂気ではなく、どこか少しだけおかしい程度のものです。
現実世界でも、わかりやすい狂気というものは、あまり見かけることがありません。
このあたりのさりげない狂気の描写が、読者をぞわっとさせていると感じます。
こういったちょっとした狂気によって、作中での出来事は大きくズレていくことになります。

純文学的な描写

この作品を、僕は他人に薦めようとはあまり思いません。
というのは、この作品自体、読者を楽しませようとして書いているとは感じなかったからです。

言うなれば、娯楽よりも芸術性を重視した、純文学的な作品だ感じました。

しかし多くの純文学作品がそうであるように、読者を楽しませようと書いているわけではなくても、面白い作品というものはあります。
この作品も、まさにそのような印象を受ける作品です。
すべてを説明しようとするわけではないがために、読者が勝手に深く解釈し、自ら面白さを見出そうとしてしまいます。
ある程度、自分で面白さを見出して楽しめる人になら、この作品はお薦めできると思います。

主人公の行動の根幹が結局は性欲であったり、女性関係がドロドロしている点も、純文学的なポイントが高いです。
「人間失格」然り、「こころ」然りです。

感想(内容には触れないネタバレあり)

全13巻という冊数は、一気に読むには少し多い冊数です。
それでも、(僕がそうしたように)土日を使って一気に読んでしまうほどには、何かパワーがある作品だと思っています。

明るく楽しい内容の物語ではありませんが、2年ごとに物語の時系列が区切られているため、メリハリはあります。
区切られるごとに、周りの人物が目新しくなるので、少し新鮮な気持ちになります。
とは言っても、登場人物も使い捨てではありません。
使い捨てどころか、序盤に少しだけ出てきた人物が、後半では重要人物として登場したりするなど、長く活躍します。
伏線も色々なところに張られており、後から読んで「これはこういうことだったのか」と納得することも多いです。

何だか、感想を書けば書くほど、この作品の本質から離れていってしまうように思えます。
決して愉快な漫画ではないので、自ら読もうと決めた人だけ、読破することが出来る作品だと思います。
色々なメッセージが込められた作品だと思いますが、読者によって抱く感想も違うと思います。

僕がこの作品を読んで感じたのは、「人生はほとんど思い通りにならない」「些細なことの積み重ねが、気付かないうちに大きく人生を変えていく」「他人は他人のことなどわからない」というようなことです。
うまくまとめることが出来ませんでしたので、感想はひとまずこれくらいにしておこうと思います。
またまとめられるようになったらリライトします。

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