虚構英雄ジンガイア(フリー・長編SFノベル)紹介・感想

ゲーム
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サークル「SowChild」様のブランド「ばかすか」によるノベルゲーム「虚構英雄ジンガイア」をプレイしました。
元々は2015年末から有償の連作形式で、プロローグ・vol.1~vol.3・FINALと頒布されていたものが、2022年に全て無償で公開されるようになったとのことです。

全部で100万文字を超える圧倒的なボリュームで描かれたビジュアルノベルです。
キーワードとしては「ダークSFファンタジー、王道へのアンチテーゼ、バトル、家族」といったところでしょうか。

クリア時間はプロローグ~vol.3が合計約10時間、FINALが約9時間で、合わせて約20時間ほどでした。

ダウンロードはこちら
BOOTH

※ゲームファイルは2つあります。
・虚構英雄ジンガイア Vol.3 (Proroge~vol.3までの4作を収録)
・虚構英雄ジンガイア FINAL(FINALのみ収録)

ゲーム概要・感想(ネタバレ無し)

神原英雄(かんばらひでお)は、妻・鳴海(なるみ)、息子・大介、娘・真衣と、平和な日々を過ごしていました。
しかしある日突然、荒廃した世界に放り出され、巨大怪獣に追いかけられます。
必死で逃げる英雄の前に、謎の巨大ロボットが現れるというところから、物語が始まっていきます。

本作は選択肢の無い一本道のビジュアルノベルで、文章を読んでいくことでゲームが進んでいきます。
元々は有償で頒布されていた同人ゲームということで、グラフィックや音楽には力が入っているように思います。
背景グラフィックは、主に実写をベースとした素材が多いのですが、キャラクターの立ち絵などはオリジナルで書き下ろされています。
BGMについても、ここぞという場面では効果的に使われており演出面でのこだわりが感じられました。

本作の導入はある意味、王道的な形で始まっていきます。
しかし本記事の前書きのキーワードでも書いたように、むしろその王道を裏切るようなストーリー展開がなされていきます。
我々の頭の中に浮かぶような「王道」というものに関して、ある種の問いを投げかけられているような印象を覚えました。

序盤から謎が謎を呼ぶ展開が続き、状況がなかなか明かされないのがじれったく感じることもあるかもしれません。
ただし、もしそう思ったのであれば、既にこの作品に引き込まれていると言っても良いでしょう。
謎や伏線は多めで、すぐに明かされないものも多いです。
しかし読み進めていけば、多くの謎は詳しく説明され、明かされていきます。
サスペンスやミステリーで、読者に向けての焦らしに慣れしている人であれば、本作も楽しんで読み進めていけると思います。

感想(ふんわりとしたネタバレ有り)

かなりボリュームがあるビジュアルノベル作品でした。
プロローグから始まり、vol.1~FINALへと、どんどん物語は面白くなっていきます。
特にFINALのボリュームは圧倒的で、全体の半分を占めるくらいの量だったと思います。

さて、まだプレイしていない人に、ネタバレ抜きで本作の魅力をどのように説明すれば良いのでしょうか。
BOOTHのダウンロードページには、「これはいつか父親になる物語」と書いてあります。
これが本作のメインテーマというのは間違いないと思います。
しかし長編作品ということもあり、このテーマだけで終始物語が進んでいくわけではありません。
様々な要素を含んでいる作品なので「ここの展開は好き、ここの展開は好きじゃない」と、展開によって様々な感想を抱くかもしれません。

たとえば、プロローグ~vol.1では、突如見知らぬ世界に放り込まれた主人公たちをパニックホラー的な雰囲気で描きながらも、少しずつ世界の謎に迫っていくというサスペンス的な雰囲気もあります。
そしてVol.2では、大きく状況が変化して新鮮な雰囲気で読み進めて行けるでしょう。
vol.3では、とある理由により登場人物をそれぞれ深く掘り下げていき、物語の核心へと迫っていきます。
FINALでは、おぼろげながらも希望が見える展開とさらなる絶望、そして非常に熱い展開が多く、アップダウンが激しい内容になっています。

「父親」というのは大きなキーワードではありますが、記事の前書きにも書いたように、ホラーやサスペンス的な展開もあればSF的展開もあり、ファンタジー要素・バトル要素も多く、様々なメッセージが込められている作品となっています。
本作を読み始めて、少し好みと違うなと思っても、読み進めていくとどこかで好みに引っかかるのではないかと思います。
それくらい各要素が上手く同居して、個性的な魅力を生み出していると思います。
色々な種類の面白さが凝縮している作品なので、「作品の全部が好き or 全部が嫌い」、とはなりにくいのではないかと思います。

とりあえずこういったノベルゲームは、ひとまず読んでみないことには、雰囲気がつかめないと思います。
現在はフリーゲームとして公開されて気軽に読むことができるので、少しでも気になったら読んでみてはいかがでしょうか。

感想(ネタバレ有り)

本作を楽しむ上で、プレイ前にネタバレ見ることは避けた方が良いと思います。
色々な新事実が明らかになり、衝撃を受けることが本作の楽しみ方の一つだと思いますので、ネタバレを見るのは自己責任でお願いします。

作品の登場人物が、同じ時間軸を繰り返すようなループ展開は、近年ではよく見かけるようになってきました。
古くは「火の鳥・異形編」、近年では「ひぐらしのなく頃に」や「STEINS;GATE」など、作中のキャラクターが何度もロードでやり直すという展開が、プレイヤーの感情移入の度合いを深めるのか、総じて面白い作品が多いと感じます。
どのような原理でループしているかという点もループ物の見所の一つだと思いますが、本作でもオリジナリティある原理で面白かったです(リセットされるごとに何度もクローンで再現する)。

従来のゲームシステムであるセーブとロードを特殊能力として使い、現実で試行錯誤して望む展開にしていく方法は、おそらく誰でも一度は妄想することであり、とても興奮しました。

しかし、vol.2においてはそのやり直し行為が否定的に描かれており、作中でも桜子が英雄に怒っていました。
テツの「英雄は繰り替え成す中で見失ってしまっただけです。大切なものを捨てたわけじゃない」というセリフ、桜子の「お前は今どこで生きてるんだ?」というセリフは印象的でした。
英雄も劇中で言っていましたが、セーブとロードがいくらでもできるということは「もし失敗すればもう一度繰り返せばいい」という考えになってしまい、決断に重みが無くなってしまいます。

「もしもあの時」という考えは誰しもが抱く思い(呪い)ですが、その時に考え抜き、覚悟を持って選択しているのであれば、その選択と共に生きていくしかないのだと思います。
(余談ですが、同じく「ばかすか」様が製作したノベルゲーム「彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール」でも、選ばなかった選択肢側のヒロイン達が切り捨てられている点に注目しており、似たテイストの切り口だと感じました)

しかし、セーブとロードを気の遠くなるほど繰り返し、その道を突き詰めた虚構英雄が、最終的に絶対正義を追い詰めたというのも一つの事実です。
このシーンは個人的に、本作で最も好きなシーンの一つで、最高に格好いい場面だと思います。
ゲーム的な繰り返しで少しずつ強くなっていくのは、僕の好きな作品「All You Need Is Kill」のようで、とても興奮しました。

それに加え、虚構英雄が正解の選択を選ぶのを手助けする因子として、本作を遊ぶ我々がゲーム内に組み込まれているというのも、面白いギミックです。
作品中ではゲームパッケージの画像が表示されている画面にて、「魔法具」という扱いでさらっと語られていただけでしたが、こういう意味だったと理解しています。

ただ、その虚構英雄もラストスプリントにおいては、神原英雄に敗れています。
このことから、子供のために走る父親こそが、一番最強で格好良いんだということが描かれているのだと思います。
そして最後は、大介を助けた時点で、英雄は永久に停止することになります。
元の世界では静の代わりに死んでおり、結果だけ見るとバッドエンドのようにも見えます。
しかし、永久にこの状態であり続けるということは、永久に父親であり続けるということであるため、英雄の表情もどこか誇らしげに見えてきます。
「これはいつか父親になる物語」という言葉の意味がラストでようやく実感でき、何とも言えない余韻に浸りました。

さて、全員ではありませんが、キャラクターについて所感を書いていきます。

・神原英雄
凡人代表のような主人公でしたが、だからこそ感情移入できたキャラクターでした。
特殊能力を発揮するわけではなく、何もせずに異性からモテるわけではなく、等身大な感じが好きでした。
鳴海との馴れ初めについても、勇気を出して自分からアプローチした結果、向こうからも気になる存在に認定されていますし、ちゃんと努力した分だけそれなりに報われているという、普通な感じです。

学生時代の鳴海からの目線だと、やたら馬鹿扱いされて笑ってしまいました。
英雄目線だと、焦って変なことばかり言っている印象でしたが、鳴海目線だと、何だか天然で大らかな人間に見えてくるので不思議なものです。

ただ、そんな英雄であっても可能性の一つとして、虚構英雄となって絶対正義を打ち倒す可能性があるというのは、やはり主人公っぽくて格好いいなと思います。
他作品に例えて恐縮ですが、正義の味方に本気でなろうとした衛宮士郎(Fate)のようで、これはこれで努力の最果てにある一つの結末だったと思います。
見た目は甲冑を着込んでいるように見えるので、見た目とストイックな言動からゴブリンスレイヤーのようにも感じられました。

・神原鳴海

ほんわかした雰囲気なのは最序盤だけで、vol.1~vol.2では底が見えない戦闘力と、ヒーローを具現化したかのような不気味さで、ホラーっぽい雰囲気が漂う印象でした。
鬼桜の面々との戦闘で、10%くらいの力云々と言い放つ姿は、まさにフリーザ様のようで圧倒的な印象でした。

過酷な幼少期を送ったせいで、別人格ともいえるテッドが生まれてしまいましたが、英雄に救われたというところでしょう。
「誰も知らないワルツ」自体は、関係のある人同士を引き寄せ合う魔法具のようですが、鳴海の心にテッドが生まれたのは魔法具の効果とは関係ないのかなと思っています。

・神原大介
元はと言えば、大介が作り出した世界の設定ではありますが、別に大介自身が悪いとは思えなかったため、あまり責める気にはなりませんでした。
静を助けたい一心で、世界をリセットするために生存者を蒸発させるのも致し方ないと思いますし、何だか可哀想だなと感じました。
ジンガイアになって身動きできなくなるわ、父親は意識不明になるわ、自分自身からはロジハラされてジェノサイドを強要されるわで、「父親の助けが必要な子供」というキャラとしては、とてもしっくりきていたと感じます。

・神原真衣
最序盤にて、本作の救いの無さをプレイヤーに突き付ける人物として、大きな存在感を放っていました。
まさか怪物の正体だとは思っていなかったため、鳴海と同じく衝撃を受けました。
家族の皆とじゃれたい一心で襲い掛かっていたのかと思うと、何とも言えない気持ちになります。

・美波
あまり良い結末は待っていなさそうだな・・・と思っていたら、その予感が当たってしまったキャラでした。
ラスボスコンビが、嫁の妹と娘というのはあまり見た記憶が無いので斬新な気がしました。

・桜子
人間としてのヒーロー最高傑作というだけあって、一番ヒーローらしいカリスマを持った人物です。
頭脳も身体能力も飛び抜けており、どんなに困難な状況でも何とかしてくれそうな頼りがいのある人物でした。

序盤は粗野な印象で、「ブラックラグーン」のレヴィのようなイメージでした。
しかし相当頭も切れるということで、世界の仕組みや謎解き部分でも、早すぎる理解力で名探偵っぷりを見せつけてきました。
さらに魔術師の家系の生まれで魔法についても造詣深いという、強キャラ要素盛り盛りの人物でした。
それゆえに、最後に敵となったときの絶望感は凄まじかったです。
作品が違えば主人公となっていておかしくないカリスマ性でした。

・テツ
過去の経歴と現在の見た目のギャップが大きく、テツの過去語りが始まっても、テツのことだとなかなか理解できず、頭に入っていくのに時間が掛かった印象です。
最終的には桜子を超えたわけですが、なぜ超えることができたのか、そのポテンシャルのルーツは何だったのでしょうか。
おそらく願望が具現化する世界の効果により、桜子に対する誰よりも強烈な憧憬が具現化し、彼女を追い抜くことができたのではないかと推測しています。

・最川
魔王という配役を与えられている割には、戦闘シーンで泣かされているイメージでした。
登場初期はヒーロー適正を持った鳴海に圧倒されますし、後半も蛭田にしてやられてしまっている印象です。
ただ、物語後半では英雄と同じく「父親」という役割を担った人物でもあります。
格好いい良いところはあまり見せられないながらも頑張っているシーンが多く、応援したくなりました。
あまり順調とは言えない思春期を送っていたこともあり、余計に頑張って欲しいと感じた人物でした。

・モブ
最初は桜子とテツのオマケくらいにしか思っていなかったのですが、後半では「母」という役目をこなしている人物として、重要な役割だったと思います。
鳴海、鳴海の母、最川の母など、本作に「母」や「父」は多く登場しますが、それぞれ比べてみると面白いなと感じます。

・御子神&のんちゃん
女性同士の心温まる交流が描かれたと思ったら、最終的には相手のクローンを生むという、予想の斜め上をいく結末となりました。
これが男性同士だったら相手のクローンを生むという展開は出来なかったわけなので、女性同士である必要があったということになります。
のんちゃんの方が死ぬ展開になるかと思っていたので、御子神が死ぬのは少し意外でした。

・静
本編の世界が生まれた根本の原因となった人物です。
誰が悪いわけではないと言いたいところですが、信号無視をした運転手が一番悪いです。
御子神のクローンとのことで、最終的には世界脅威になりそうな気がするのですが、それはきっと別のお話なのでしょう。

・東堂
そつなく何でもこなせそうなイケメンなので、根拠なく「コイツが黒幕に違いない!」と思っていた時期もありました。
黒幕でも何でもなく、ただの超人でした。
影山や岸らと比べると、やはり格が違う強さだと感じます。

・蛭田
登場した瞬間から、うさん臭さが全開だったので、敵になるだろうなとは思っていました。
目にハイライトがないキャラは闇を抱えている法則です。
人の数が少ないこの世界では、自分より下の人間がいないという絶望が凄い、というのは分からない話ではないです。
たとえが適切か分かりませんが、学年で成績が最下位であれば、自分より下の成績の人間がいないということで、物凄い劣等感のために卑屈になってしまうのでしょう。

ただ、だからこそみんなに不幸になって欲しいという理屈がよくわからず、不気味でした。
反論しても話が通じないですし、自分の中で勝手に納得して完結している様子なので、大介が不気味さを感じたシーンは共感しました。
ジョジョ6部のサンダー・マックイイーン君のような、自分が世界で一番不幸だと思っている自己中心的な邪悪さを感じるキャラです。
敵役としては、腹立たしく感じるという意味で良いキャラだったと思います。

・Ashley
本作の黒幕に手を貸していた、さらなる黒幕といったところでしょうか。
本作の世界の広がり、スケールの大きさを感じさせてくれる存在ではありました。
第四世界脅威『観測の魔女Ashley』というCoolなワードに興奮しました。
第五世界脅威はミコガミとのことですが、こうなると第一・第二・三も気になってくるところです。

そのほか、本ブログで紹介しているゲームをまとめた記事はこちらです。
本ブログで紹介しているゲーム系の記事まとめ

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