RPGツクール製のアドベンチャーゲーム「村雨」や「ヒトミサキ」等、ミステリーやサスペンス系の作品を多く公開されている、裏束氏の最新作「SHADOW」です。
CHAPTER1から順に少しずつ公開されていましたが、今回、完結となるCHAPTER4が公開されました。
こういったどんどん先が知りたくなる作品は、一気にプレイしたいので、完成をとても心待ちにしていました。
ワクワクしながら一気にプレイして、クリア時間は約5時間でした。
一つ一つの章は、それほど時間が掛かりませんので、一時間ドラマを観ている感覚で楽しめます。
ゲーム概要
ジャンルは「暗躍系スクールカーストADV」と銘打たれています。
ストーリー内容としては、転校生である主人公・来栖恭也が、イジメに関わる問題に巻き込まれ、仕方なしに解決していくという話です。
解決していくと言っても、正義の味方のごとく正面から解決するわけではありません。
大っぴらに矢面には立たず、まずは裏で暗躍して解決の準備をしていきます。
問題解決のための証拠と、相手がもう逆らえなくなるくらいの報復材料が集まった段階で、解決編へと移行します。
綺麗な手段だけではなく、汚い手段も含めて躊躇なく使っていくあたりは痛快です。
個々の問題を解決していくうちに、一連の事件の裏で手を引く、真の黒幕の存在も見え隠れし、その正体が誰かという謎も、本作の重要なポイントです。
シナリオパートを読み進めていくと、問題解決に必要な行動をするための、行動パートが始まります。
実際に校内を探索し、人物や物を調べて、必要な行動をこなしていきます。
必要な行動は、メニューの「メモ」画面から確認することができます。
メモを確認していくと、こなしていくべき行動や優先順位について、知ることできます。
行動パートには日数の制限があるため、行動の優先順位を確認することは非常に重要です。
行動パートに入ったら、必ず確認するようにしましょう。
校内を探索すると、必要行動に関係のある人物や場所については、!マークのアイコンが表示されます。
正解・不正解がある選択肢が発生する場合もあるので、とりあえずセーブをしておくと安心です。
必要な行動をすべて消化すると、画像のように表示され、解決編へと進みます。
解決編でも選択肢が発生することがありますので、注意が必要です。
感想(ネタバレ無し)
本作の面白さは、何といってもシナリオの面白さに尽きると思います。
僕が好きなデスゲーム系の漫画で、「トモダチゲーム」という作品があります。
その主人公のように、先を見通して周到に計画し、手段を選ばず相手を倒すとという展開はとても痛快です。
イジメのシーンなど、ストレスが溜まる描写が前半にあるだけに、解決編のカタルシスも大きいです。
今までの作品も同様に、無駄を削ぎ落として洗練された会話こそが、本作のテンポの良さに繋がっていると思います。
情報が多過ぎず少な過ぎず、一貫してプレイヤーが読みやすいバランスの文章だと感じます。
このような文章を書けるというのは、天性の感覚か訓練によるものだと思いますが、凄いなと思います。
ゲーム部分については、クエストのような方式で、やるべきことが明確にされているおり、とても分かりやすかったです。
もし何も情報が提示されずに、ざっくりと探索させられるだけであれば、行動パートのたびに面倒に思えていたかもしれません。
ストーリー進行のためにやるべきことを、一つ一つ消化していくのは、達成感が得られました。
セーブやリトライの点でも、ストレスフリーで親切な設計です。
仮にゲームオーバーになって、セーブしていなかったとしても、行動パートの一日目からやり直すことができます。
しっかりと推理する派のプレイヤーも、総当たり派のプレイヤーでも安心してプレイできます。
本作はRPGツクールMVで作られているため、キーボード操作だけではなく、マウス操作にも対応しています。
教室内で誰かに話しかけたいときなどは、その対象にクリックすれば、自動的に最短距離を移動してくれるため、キーボード操作より快適でした。
タブレットでプレイしている自分としては、ワンタッチで対象まで移動+会話できるので、楽でした。
やられたことに対する報復という気持ちよさと、推理という謎を解く気持ちよさとを融合させた作品だと思います。
シナリオの完成度も高く、多くの人にお勧めできる作品です。
攻略メモ(ネタバレ有り)
基本的には、行動パートになったら必ずセーブするようにすれば、詰むことは無いでしょう。
さらに、人に話しかける前にもセーブしておけば、より盤石です。
仮にゲームオーバーになっても、1日目からやり直せるので、それすらも必要ないかもしれません。
本項では、迷いそうな選択肢を中心に、正解のメモを書いておこうと思います。
全ての選択肢を載せているわけではないので、ご注意ください。
CHAPTER1
最初の行動パートだけあり、期限は十分にあります。
多少選択を間違えても、ほとんど支障はありません。
三日月の説得から初めて、確実に必要な行動を消化していきましょう。
深水の机にバラまくためのゴミは、1階渡り廊下の北から行けるゴミ捨て場の方で入手できます。
・三日月の説得
「『栗原の計画は完璧だったもんな』と卑屈に言う」
CHAPTER2
期限が短いので、総当たりしてもゲームオーバーになる可能性があります。
・相馬の説得
「飛崎がどれほどヤバい奴なのか質問する」
・乾への指示
「懐疑的な態度」「上着のポケットから盗撮」
・入江の監禁場所
「地下室」
・真犯人
「入江」
CHAPTER3
1日目
・阿久津の傀儡化
「阿久津を全否定した上で説得する」
すぐに正解か不正解か分からないので、少し厄介です。
2日目
・メモ⇒罪人の推測⇒牧島⇒「有村の状況」
・阿久津⇒「特定の人物を吊るし上げる」
3日目
・メモ⇒犯人の目的の阻止⇒犯人の目的は別にある⇒この会議のルール⇒監禁者たちの抹殺
・メモ⇒犯人への罠、牧島に話しかける⇒ハッタリで脅す
CHAPTER4
2日目
・牧島と職員室で校長の説得⇒「全ての責任をこちらで負う」
3日目
・渡瀬と会話⇒「榊のことを話題に出す」
4日目
・メモ⇒黒幕の目的解明⇒「試験」⇒「爆発させる気はある」⇒「生贄に危害を加えるつもりはない」
すべて正解の場合のみ考察が完了するので、総当たりでは大変です。
5日目
・メモ⇒黒幕との対峙⇒「体育館」
感想(ネタバレ有り)
*別作品「村雨」についての一部ネタバレもあるため、未プレイの場合はご注意ください。
一話ごとに完結しつつ、本編全体の大きな謎も少しずつ判明していく感じは、一時間のサスペンスドラマのようで楽しかったです。
来栖の計画通りに、次々に事が運んでいく様子は、プレイしていて快感でした。
後半は毒ガス発生装置や爆弾などが登場して話が大きくなっていきますが、舞台装置として良い緊迫感がありました。
解決と思いきや、そのもう一歩先でどんでん返しがあるのは、今までの作品同様にさすがだと感じます。
CHAPTER2の真犯人については、もう解決だと思っていたときに、いきなり犯人指名の選択肢が出てきたので、驚きました。
作者の「村雨」を思い出し、同じくイジメられ役だった入江を指名したところ、正解できて嬉しかったです。
「村雨」や「ヒトミサキ」の人物がさりげなく登場しているのは、シリーズのファンとしては少し嬉しかったです。
警官になっている瀬崎、その上司である安田刑事、そして良からぬ売人となっている高島です。
瀬崎が警官になっているということは、少なくとも「村雨」や「ヒトミサキ」からは数年は経っているということでしょう。
以下、登場人物を中心に感想を書いていこうと思います。
・来栖 恭也
黒崎も指摘している通り、主人公らしく、ある意味とてもお人よしなキャラクターです。
借りはしっかり返す義理堅い人物ですが、柔軟性があり、個人的には好きでした。
頭も切れて冷静ですし、見ていて安心感のある人物でした。
敵には回したくない相手です。
・阿久津 宗一
Fate的なアライメントで言うなら、典型的な「秩序・善」というキャラクターでした。
正義感が暴走することはありますが、基本的には良い奴なので、かなり好きなキャラクターの一人です。
終盤では、自分の信念とは反する部分がありながらも来栖を認め、協力することが最善だと判断する柔軟性を持つようになっており、好きなシーンの一つです。
エピローグでブラックな手を使うあたりも、一皮むけた感があります。
・乾 一
最初に、来栖の部屋を訪ねてきたときは、もう少し思慮深いキャラクターだったと思うのですが、中盤以降は完全に脳筋キャラになってしまいます。
相馬のキャラクターと重ならないようにしたせいなのかもしれません。
来栖の相棒と言っても良いキャラで、要所で重要な役割を果たしていました。
本作の癒しキャラの一人なので、彼が黒幕じゃなくて良かったとホッとしています。
・飛崎 淳平
かなり頭のネジが外れたタイプの不良で、絵にかいたような悪でした。
自分が計画した内容でないにせよ、毎日1時間も人を殴って喜びを感じるサディストという感じです。
「村雨」の浅木とも違い、完全な悪役のまま終わりました。
・入江 瞬
飛崎がストレートな悪役とするなら、入江は歪んだ悪という印象でした。
ある意味、需要と供給が成り立っていたのなら、そっとしておけば良かったのだろうと思います。
来栖が乾をけしかけてしまったのがきっかけなので、来栖の責任と言えば責任なのですが、まさか誰も予想できない関係なので、仕方なかったのかもしれません。
・相馬 雄吾
飛崎の取り巻きですが、相馬自身が酷いことをしている描写がそんなにないので、あまり悪い印象はありません。
むしろCHAPTER2以降、自分の弱さを自覚したあと来栖に協力してくれるので、格好いいとさえ思ってしまいました。
こういう人間臭いキャラクターは好きです。
・深水 結乃
聖人のような優しいキャラクターです。
CAPTER2以降は影が薄いですが、最初の被害者なので印象に強く残っています。
自室での魔法少女ごっこについては、本人の自由ですが・・・バラされたら確かに自殺してもおかしくなさそうです。
・栗原可憐&幸田歩美
分かりやすい女悪役でした。
計画書と関係ない段階から、かなりエグいイジメをしていたので、えげつないなという印象です。
CHAPTER2以降はすっかり来栖に怯えてしまっており、幸田に至っては変なお嬢様口調がツボでした。
被害者である結乃が許しているのなら良いですが、実質的なお咎めはありませんでした。
来栖に懲らしめられていなければ、歪んだ大人になっていたかもしれないので、そういう意味でもラッキーだったのかもしれません。
・三日月 凛
間違ったことはしていないのに、損してしまうタイプの男前なキャラクターでした。
しかし来栖に助けられ、乾と並んで頼れる相棒と言う感じになりました。
照れた表情は、結乃と並んで可愛いらしかったです。
・雨宮 忍
変わり身が早く、もともと良い印象を持っていなかったので、計画書の黒幕とわかっても、あまり驚きはありませんでした。
ある意味、来栖とは良いライバル関係にもなれそうで、面白そうなキャラクターでした。
・榊 舞
本作で、一番ぶっ飛んでいる本性を持っていると感じるモンスターでした。
雨宮でさえ、人を殺す計画までは企てず、人間関係の調整という損得勘定での動機です。
しかし榊の場合は、積極的に殺す方向へ持っていっています。
黒崎が持つ情報も無しに計画書を書いた人物の正体に迫ったり、計画を乗っ取ったりするなど、黒崎をも驚かせる動きを見せています。
頭が切れて、さらに凶暴な性格というのは、悪役として存在感があり魅力的でした。
・渡瀬 加奈
何だか可愛そうな仕打ちばかりを受けている印象が強く、同情してしまうキャラでした。
飛崎から物理的にボコボコにされ、舞からも精神的にボコボコにされ、幼い精神力では耐えられないのではないかと思っていました。
最後は来栖に焚きつけられる形で、自分なりに闘争心を燃やして立ち上がりました。
当初は、不確かな噂だけで来栖を毛嫌いする人物でしたが、最後には応援したくなるキャラクターになりました。
・山田
分かりやすい悪役で、しかもそれほど頭も良くありません。
すぐに報いも受けることになるので、それほどストレスが溜まる存在ではありませんでした。
しかし黒崎へのパワハラが、一連の事件を起こす遠因にもなっていたと考えると、どうしようもない存在だなと思います。
このご時世、パワハラやセクハラはリスクが高すぎると思うのですが、これくらいの年齢の人は、古い感覚のままやってしまうんだろうなと感じます。
・牧島 葉子
事なかれ主義の、ある意味よくいるタイプの教師だったと思います。
積極的に誰かに害を加えているわけではないので、それほど嫌いではありませんでした。
小悪党的でありながら、それほど頭が良くないのも可愛げがあります。
最終的に校長にブチ切れるシーンは、溜飲が下がると同時に、見直したました。
単に後先を考えずに、怒鳴ってしまっただけかもしれませんが。
・黒崎 渡
黒幕ですが、サブシナリオを読んでいると、何だか同情してしまう部分もあり、複雑な気持ちです。
黒崎に刺されるとは思っていなかったのでしょうが、用意していた罠を考えると、根はかなり陰湿です。
しかし黒崎と来栖の違うところは、他人のために動けるということだったのでしょう。
そうやって助けた人によって、来栖は逆に救われて、また学校へと戻ってくることができました。
その点が、人を最後まで信じられなかった黒崎との違いだったのだと思います。
黒崎も、過去に色々とあったようなことを匂わせており、少し気になるところです。
・校長
本作で、一番苛立ちを感じた人物でした。
山田のような教師をのさばらせていることが、今回の事件を引き起こしたと言っても良いでしょう。
生贄選定権を譲るように説得するときも、責任逃ればかりですし、牧島が可愛く感じるほどです。
さらにエピローグでも、犠牲者を最小限にして解決した来栖にすべての責任を押し付けて、切り捨てるようなことばかり言っています。
本作では色々な悪役が登場しましたが、誰が一番の悪かと聞かれれば、この校長だと答えたいところです。
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