米澤穂信 おすすめ作品ベスト4

(2018年10月時点)
僕の好きなミステリ作家の米澤穂信さんの作品について、感想や紹介をしていきます。
なるべくネタバレはしないように心がけていきます。
それにしても、ネタバレしないようにだと、なかなか紹介文が書けないですね。
これは自分の文章力の問題だと思いますが・・・少しだけでも雰囲気を感じてもらえれば幸いです。
なぜベスト4かというと、3冊に絞れなかったからです。

儚い羊たちの祝宴

自分が初めて手に取った、米澤穂信さんの作品です。
煽り文句の「ラスト1行の衝撃を楽しんで欲しい」という言葉に惹かれ手に取りました。
どの短編も、非常に丁寧で淡々とした語り口の作品です。
各話の主人公は、みんな良家のお嬢様です。
そのせいか、我々の常識と違う点があっても、「上流階級の人たちはこういうものなのかな」と、無意識のうちに納得させられる語り口です。
冷静に考えてみれば、どこか異常だったり、狂気を孕んでいるように思えるのですが、あまりそれを感じさせません。
「ラストの1行の衝撃」は、どんでん返しという趣きのものではなく、ガツンとくるようなゾッとするような、そういう類のものです。

・身内に不幸がありまして
「それでこの言葉に繋がってくるわけね」という話です。
たちの悪いブラックジョークのような話なのですが、そう感じさせない語り口調はさすがです。

・北の館の罪人
一見、良い話のように終わりかけるのですが、とある仕掛けで犯人を告発する様は、鮮烈でゾッとします。

・山荘秘聞
丁寧な語り口ながら、はらはらさせる内容で、最後まで読み手側を緊張させます。
どんでん返しにつぐどんでん返しで、最後は解釈に別れる内容です。
僕は最初に読んだとき、「ああ、こうなってしまったか」と思ったのですが、他の人の感想を読むとまったく違う解釈で、自分の血なまぐさい解釈はどうも間違っているようでした。

・玉野五十鈴の誉れ

これも、最後にある言葉を持ってくるために構成されており、読み終えた後にゾッとします。

・儚い羊たちの晩餐
とにかく「アミルスタン羊」という言葉の存在感があります。
それが何なのかは、大体分かるものの、それを直接的に言及しないところに、独特の不穏なムードが漂っています。
この短編集に共通した作法だと思います。

満願

まだ文庫では出ていない作品ですが、ぜひ読んで欲しい珠玉の短編集です。
「儚い羊たちの祝宴」とは違う雰囲気の作品です。
基本的には、淡々で綺麗な文章ながら不思議とすらすら読んでいける、米澤さん独特の雰囲気を持っています。
この作品の肝は、殺人などの犯罪行為が、あくまで手段として行われている部分です。
登場人物がそれぞれ譲れないものを持っており、それを守ったり手に入れるために、殺人すらもただの手段として扱っているところに、執念や凄みを感じさせます。
自らの願いを叶えるために冷静に行っていくさまは、読み終えたあとも心に残ると思います。

・夜警
とりあえずは、もう解決してしまった事件のお話です。
読み終えて、真相を知ってしまった読者は、どんな感想を抱くのでしょうか?
人間の業の深さに呆れつつも、戦慄する短編です。

・死人宿
やるせない結末に終わる一編です。
事件を解決して、めでたしめでたしではなく、ここがどういう場所なのかということを、
思い知らせられる話です。

・柘榴
女性の怖さというものが、描かれている作品です。
娘だと思っていた相手が娘ではなく、「女性」だったという点も、恐ろしいです。
しかし、一番恐ろしいのは「彼」であることは間違いないでしょう。

・万灯
短編にしては、場面転換・時間経過が長く、どこにミステリー要素があるのかなと最初は思っていました。
後半、まさかこういう形で犯人の特定に繋がるとは、思ってもいませんでした。
主人公を特に悪人とは感じさせない書き方でしたが、読み終えた後冷静に考えると、手段を選ばない人間になっているのでした。
一線を越えるときは、劇的なきっかけがあるわけではなく、気付いたら越えているものなのかと感じます。

・関守
危険なことなど何もないはずなのに、何か得体の知れない雰囲気の作品です。
そして段々雲行きが怪しくなり、急激に突き落とされるような、そういう怖さを感じます。
最後のセリフは、言いようのない凄みがあります。

・満願
表題作にもなっている、こちらの作品。
この単行本全編を通して言えることですが、何が一番大事なものなのかは人それぞれなのだ、ということを強く感じさせる作品です。

王とサーカス

ネパールを舞台として、女性ジャーナリストの太刀洗田万智が、実際に起こった王族殺害事件に遭遇し、それに関連した殺人事件に向き合う話です。
探偵というわけではなく、あくまでジャーナリストという立場から事件に向き合います。

次の「折れた竜骨」もそうなのですが、異国情緒をたっぷりと感じさせる、この作品の描写がとても好きです。
僕は本を読んでいると、風景がイメージに浮かび上がってくるタイプの人間です。
この一冊を読んだだけで、自分が旅行に行ったような気分になってしまいます。

さて、内容についてです。
作中では主人公に対して、非常に容赦の無い厳しい質問が突きつけられます。
もちろんその質問は、作中の主人公に対して突きつけられているのですが、その問いかけは普遍的な意味を持って、読者の我々にも突きつけているように感じます。

前作にあたる「さよなら妖精」では、いち登場人物としてクールに描かれた大刀洗ですが、この作品では、彼女の視点を通すことでより人間らしさを感じ、素直に感情移入することが出来ました。
単なるミステリ・サスペンスというよりは、大きなテーマを感じさせる、とても素晴らしい作品でした。

折れた竜骨

世にも珍しい、魔術が存在する世界観でのミステリです。
ただし、魔術があるから何でもありというわけではなく、あくまでそういうギミックだと位置づけられているに過ぎません。
逆に、魔術というものが存在するからこそ、ミステリとしての成立させるために、フェアであることを厳密に守っているような気がしました。

異次元世界の話というわけではなく、中世のヨーロッパの架空の島が舞台となっています。
前述した「王とサーカス」と同じように、この作品でも、異国情緒たっぷりに、その街のあり方や歴史、文化、人々が描かれています。
もちろん創作ですから、登場する固有名詞などには、実在しないものが多くあるのですが、非常に緻密な設定で描写されているため、本当に存在したかのように感じてしまいます。

登場人物も魅力的で、思慮深い探偵役のファルク、助手役といえる少年ニコラ、聡明で癖のない性格の主人公、アミーナ。
そのほかの容疑者として名を連ねる登場人物も、RPGで出てきそうな設定の騎士、魔術師、弓使い、吟遊詩人などなど、とてもワクワクさせるメンツです。

文庫版は上下巻に別れており、そこそこ長い内容となっています。
しかし、本格ミステリの名に恥じない内容だと思います。
漫画版も出ていますので、小説に慣れていない人は、そちらを読んでもらえれば面白さを分かってもらえると思います(2018年10月に全5巻完結しました)。
まさかと思うような結末ですが、しかしこれしかあり得ないと納得できる終わり方でした。
素晴らしい作品です。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク