牌譜のURLの取り方を含めて、麻雀AI「Mortal」の使い方や、雀魂公式のAI「MAKA」との使い分けについては、以前の記事で一通り書きました。
ただ、ツールの使い方が分かっても、「結局どこを見て、何を直せばいいのか」という部分は、また別の話です。
僕自身、ラスを引いた半荘をMortalに通して、不一致の箇所を眺めて終わり、という時期がしばらくありました。
それでも多少は上達したと思いますが、見方を決めてからの方が、検討に使った時間が無駄になりにくいと感じています。
今回は、牌譜検討の「手順」の話です。
ざっくり言うと、次の6つです。
1.検討の目的を2つに分ける
2.見る半荘と局を絞る
3.失点の大きい領域から見る
4.AIを信じる場所と信じない場所を分ける
5.見つけたことをルールにする
6.成績で確かめる
雀魂と天鳳のどちらでも使える内容にしたつもりです。
牌譜検討の目的をはっきりさせる
牌譜検討は、終わった対局の牌譜を見返して、自分の判断を振り返る作業です。
最初に、何のために検討するのかを決めておくと、見るべき場所がだいぶ絞れます。
僕が一番腑に落ちたのは、平澤元気プロの「牌譜検討の目的は2つある」という整理です。[1]
一つは「知っている正解を、実戦で100%出せるようにする」こと。
もう一つは「正解を知らない場面で、自分なりの正解を作る」ことです。
前者は、いわゆる凡ミスの洗い出しです。
本の上では選べる正着が、実戦のスピードの中で選べていない場面を見つける作業になります。
後者は、点数状況が絡む押し引きのように、決まった答えがない場面について、自分の基準を作る作業です。
この2つは見る場所が違います。
前者は「AIと大きく食い違った箇所」を機械的に拾えば見つかりますが、後者は「自分が迷った箇所」を自分で覚えておかないと見つかりません。
僕は対局中に「今の場面は迷ったな」と思った局をスクショしておくようにしています。
もう一つ、検討で避けたいのが結果論です。
放銃したから悪い打牌、和了ったから良い打牌という見方をしていると、正しい判断まで直してしまいます。
AI検討の良いところは、放銃した打牌でも正しければ肯定してくれる点で、ここは人間の感覚より信頼できると思います。
平澤プロも「ラスを引いた半荘だけ検討する」のは結果論になりやすい、と指摘しています。[1]
どの半荘・どの局を見るか
全部の半荘、全部の局を見る必要はありません。
時間が足りませんし、細かい差の局面まで見ていると、大事なミスが埋もれてしまいます。
僕の場合は、次の2種類を見ています。
・納得のいかないラスを引いた半荘(ただし、結果論にならないよう「何が悪かったか」ではなく「どこで判断が分かれたか」を見る)
・対局中に迷った局面(結果に関係なく)
Mortalの検討結果には、自分の打牌とAIの推奨が食い違った箇所が表示されます。
僕は食い違った箇所には一通り目を通して、悪手を数えたうえで、推奨度が特に低かった箇所を数か所選んで、点数状況と一緒に見直しています。
推奨度の差が小さい箇所は、後で書くように「どちらも許容範囲」であることが多いので、深追いしなくて構いません。
対局直後は感情が入りやすいですが、「悪手を数える」という作業に集中すると、意外と冷静に見られます。
4着になった半荘でも、数えていくうちに「今回は仕方なかった」「ここだけは直せる」と切り分けられるので、落ち込み方も変わってきます。
見る順番は、失点の大きいものから
赤いマークを上から順に見ていくと、序盤の字牌の切り順のような、細かい不一致ばかりが目について疲れます。
それよりも、失点に直結する順番で見た方が効率が良いと思っています。
僕が意識している順番は以下の通りです。
1.他家のリーチや仕掛けへの対応
押したのか降りたのか、降りるならどの牌から切ったのか。
放銃の大半はここで生まれるので、まずここを見ます。
Mortalは着順を重く見る設計なので、点数状況が絡む場面で「ここは降りろ」と言われたときは、ラス回避の意図で言われている可能性が高いです。
2.鳴くか鳴かないか
鳴ける牌を見送った、または鳴かなくてよい牌を鳴いた、という判断です。
東場の安い鳴きや、他家のリーチが入ってからの無理な攻めは、僕自身が雀聖に上がる過程で控えるようにした部分でもあります。
3.手牌の進め方(牌効率)
何を切るかの平面的な判断です。
AIが最も得意とする領域なので、ここでの不一致は素直に受け取って構わないと思います。
4.リーチするか、待つか
テンパイしたときに即リーチか、手変わりを待つか、ダマにするか。
ここはAIの評価と自分の判断が割れやすい領域なので、後で書くように少し慎重に扱います。
5.序盤の字牌や孤立牌の切り順
一番不一致の数が多いのに、一番失点への影響が小さい領域です。
AIごとに傾向が違うところでもあるので、後回しでよいと思っています。
この順番は、自分の段位によっても変わると思います。
雀魂のMAKAについて書かれた記事に、レベル別の見どころとして「雀傑までは牌効率のミス、雀豪前後はリーチへの押し引きと大きな鳴き判断、雀聖以降は迷った局面の再現性」という整理があり、これは僕の実感とも合っています。[2]
自分の段位で失点の大きい領域から見る、というのが基本だと思います。
AIの評価をどこまで信じるか
AIの評価をそのまま正解として飲み込むのも、逆に信用しないのも、どちらも損です。
「信じてよい領域」と「参考程度に留める領域」を分けておくのが大事だと思います。
プロ雀士のzeRo氏がNAGAについて書いた記事では、平面的な何切る(牌効率)と基本的な押し引きは信頼できる一方、点棒状況が絡む判断、字牌の切り順、ベタオリの手順などは評価が不安定になりやすい、と整理されています。[3]
NAGAとMortalは別のAIですが、僕がMortalを使っていて感じる傾向も、だいたい同じです。
もう一つ気を付けたいのが、推奨度の読み方です。
Mortalの推奨度は「Mortalが100人いたら何人がその牌を切るか」という数字で、評価値の差の大きさとは別のものです。
自分の打牌の推奨度が30以上なら誤差の範囲、5未満なら悪手、という目安はMortalの記事に書いた通りで、30以上の箇所に優劣を付けようとしない方がよいと思います。
「見落とし」と決めつける前に、手変わりを数える
AIがリーチを推奨していた局面でリーチしていなくても、すぐに「見落とし」と決めつけない方がよいと思います。
自分の記憶が無くても、良い待ちへの手変わりを狙って、あえて見送った場合もあるからです。
見送ってよかったかどうかは、今より広い待ちに変わる牌が何種類あるかを数えれば確かめられます。
現代麻雀技術論には、手変わりを待つ目安が巡目別に書かれていて、序盤なら良形への変化が9種以上、中盤なら11種以上、終盤なら待つべき形はほぼ無い、という数字が出ています。[4]
数えてみて足りなければ、素直にミスとして直せばよいと思います。
AIの推奨と違う打牌をしていた局面は、こういう基準と照らしてから評価する方が、自分の判断の根拠が残ります。
見つけたことを「ルール」に変える
検討して終わり、では次の対局に活きません。
shoG氏のnoteに、NAGA検討の進め方として次のような手順が書かれていて、僕はこれをMortalでも同じように使っています。[5]
1.AIがなぜその打牌を推奨したのか、理由を自分で推測する
2.自分と違う選択を、次に再現できる形のルールにする(「2シャンテン以下で他家リーチが入ったら〜」のような形)
3.複数の牌譜で共通する項目を探して、自分の癖として整理する
4.他人に説明するつもりで言葉にする
5.検討仲間を作る
AIは理由を教えてくれないので、1番の「理由を推測する」が一番大変で、一番身になります。
点数状況が絡む場面なら、着順が守れるか、自分の打点はいくらか、安全牌は何枚あるか、という材料を並べていくと、推奨の意図が見えてくることが多いです。
3番の「複数の牌譜で共通する癖」は、一度まとめてみると発見があります。
僕の場合、Mortalと大きく食い違った箇所を集めてみると、序盤の字牌の切り順が一番多く、次が終盤の押し引きでした。
ただ、前者はAIの評価が割れる領域で、後者は失点に直結する領域です。
数が多いからといって字牌の切り順ばかり直しても、成績は変わりません。
直す順番は、不一致の数ではなく失点の大きさで決める方がよいと思います。
添削記事を読んでいると、多くの人に共通する癖もあることが分かります。
ゆうせー氏の牌譜添削では、孤立した1・9牌と役牌の切る順序、2つのアタマの確保、ブロックが足りないときに数牌を残して字牌を切ること、安全牌が3枚できたときのオリ、危険が無いときの過剰防御と危険が迫ってからの雑さ、といった指摘が繰り返し出てきます。[6]
自分の牌譜を見る前に、こういう「よくある癖」の一覧を頭に入れておくと、不一致の意味が分かりやすくなります。
成績で確かめる
検討して打ち方を変えたら、成績で確かめます。
このとき、段位ポイントの上下で判断すると運の影響が大きすぎるので、悪手率や一致率のような、運の影響が小さい数字で見る方がよいです。
牌譜屋の成績なら、和了率と放銃率の推移を見ます。
押し引きを直したなら放銃率が、鳴き判断を直したなら和了率や和了巡数が動くはずです。
狙った数字が動いていなければ、直したつもりで直っていないか、直す場所が違っていたか、どちらかだと思います。
人に見てもらう
AI検討の弱点は、理由を教えてくれないことです。
ののみや氏の記事でも、NAGAの弱点は「なぜ指摘された打牌が良くないのかという理由が表示されない点」だとされています。[7]
そこを補うのは、結局は人です。
自分より強い人に牌譜を見てもらえる機会があるなら、AIが赤くマークした箇所のうち、自分で理由が推測できなかったものだけを聞くのが効率的だと思います。
同じ記事で勧められているのは、分からなかった指摘をスクリーンショットでまとめて上級者に聞き、数日後に牌譜を見返して自分で説明できるか確かめる、というやり方です。
最近は牌譜検討を有料で引き受けている講師の方も増えていますし、YouTubeの添削動画を自分の牌譜に当てはめて見るだけでも、理由の部分はだいぶ埋まります。
終わりに
牌譜検討は、やり方を決めておかないと、不一致の部分を眺めて疲れるだけの作業になりがちです。
目的を2つに分けて、失点の大きい領域から見て、AIを信じる場所と信じない場所を分けて、見つけたことをルールにして、成績で確かめる。
この流れを決めておくだけで、検討の時間がだいぶ有意義になると思います。
ツールの使い方そのものは、下の関連記事にまとめてあります。
おまけ:Claude Codeで作った検討の補助ツール
ここまで書いてきたように、AI検討の一番の弱点は「理由を教えてくれない」ことです。
そこを少しでも埋めるために、Claude Codeに頼んで、自分用の補助ツールを2つ作ってもらいました。
どちらも今のところ自分用で、特に公開はしていません。
最後に、この2つのツールのまとめとして、僕が一番言いたいことも書いておきます。
「なぜこの打牌になるのか」を考えさせる卓上リプレイ

Mortalの検討結果を読み込んで、卓を一手ずつ再生しながら、Mortalと自分の判断が分かれた局面で止まれるようにしたツールです。
その局面で、他家のリーチや仕掛けの有無、着順と点差、巡目、親番かどうか、自分の手の打点の見込み、安全牌の枚数、といった材料を機械的に見積もって、押し寄りの材料か引き寄りの材料かを並べて表示します。
候補牌ごとに、現物・筋・壁・生牌のどれに当たるかも出るようにしています。

これはMortal自身が出した理由ではなく、状況から推定した参考情報です。
それでも、「着順を守るための引きだろう」「安全牌が足りないから押すしかなかったのだろう」という当たりが付くと、推奨の意図を自分で推測する作業がはかどるようになりました。

「無理ラスだったのか」を検証するツール

もう一つは、ラスを引いた半荘について、どこまでが運で、どこからが判断ミスだったのかを切り分けるツールです。
Mortalの検討結果のデータ(JSON)を貼り付けると、各局が始まった時点の点数状況から、平均的な実力の4人が残りを打った場合にラスになる確率(ラス率)をシミュレーションで見積もります。
そのうえで、自分が放銃した牌ごとに「その牌はMortalも切っていたか」を照合して、運による失点と判断による失点に分けます。
結果は、画像の下の段にある4つの数字にまとめて出ます。
・無理ラス率:最後の判断ミスの放銃が起きる直前のラス率。そこまでは自分の選択では避けようがなかった、という度合いです。
・無理ラス度:ラス率が上がった分のうち、自分に選択の余地がなかった局で上がった分の割合です。
・判断ミスで上げた分:判断ミスの放銃があった局で、ラス率が上がった分です。
・最後の判断ミスを避けていたら:その放銃がなかった場合の、次の局の開始時点のラス率です。


上の画像は、ラスを引いたある半荘を通したものです。
東1局の開始時点で26%だったラス率は、東1局の12000点の放銃で57%、東2局の5200点の放銃で73%まで上がりました。
その後、東4局の7700点の放銃で93%になり、南1局に親のツモで飛んで終わっています。
グラフの点の色は、その局で何が起きたかを表していて、青がMortalも同じ牌を切っていた放銃、赤が判断ミスの放銃です。
東1局の九索と東2局に切った東は、どちらもMortalも切る牌でした(推奨度100と59)。
一方、東4局の八索は推奨度0で、Mortalは六索を推奨していました。残り4枚の2シャンテンで押してしまった、明確な判断ミスです。
一番響いたのは東1局の放銃で、これがなければ次の局のラス率は57%ではなく24%で済んでいました。
ただ、この放銃はMortalも同じ牌を切っていたので、運が悪かったと割り切るしかない部分です。
まとめると、無理ラス度は75%で、ラス率が上がった分のうち4分の3は、自分に選択の余地がなかった局によるものでした。
判断ミスで上げたのは19ポイントで、東4局の判断ミスの直前でラス率はすでに74%、その放銃を避けていても次の局の開始時点で75%でした。
つまり、東4局をちゃんと降りていても、4回に3回はラスになる状況だった、というのがツールの答えです。
なお、このラス率はMortalの評価ではなく、和了率や打点を一般的な値で置いたざっくりしたシミュレーションなので、数字は目安です。
それでも、「今回は仕方なかった」で済ませてよい部分と、次に直すべき一手が分かれると、ラスの後の気持ちの整理もつけやすくなります。
まとめ:AIを誰でも使える今、差が付くのは「どう生かすか」
今は雀魂のゲーム内でも、公式のAI「MAKA」で、誰でも牌譜検討ができるようになりました。
AIに牌譜を見てもらうこと自体は、もう特別なことではありません。
なので、次に差が付くのは、AIの検討結果をどう生かしていくか、という部分です。
具体的には、AIの推奨と自分の打牌になぜ差が付いているのか、その原因を探って、考慮すべき要素を一つでも増やしていくこと。
そして、それぞれに重みづけをして判断材料にしていく、その精度が大事です。
上の2つのツールも、突き詰めればそのための道具です。
卓上リプレイでは、推奨の裏にありそうな材料を、押し寄りか引き寄りかに分けて、影響の大きい順に並べています。
無理ラスの検証では、ラスになった原因が運だったのか判断だったのかを、局ごとに切り分けています。
とはいえ、いきなりいろんなことを考えるのは大変です。
ただ、押し引きの材料は、極論すれば、すべて「押すか、引くか」のどちらかに還元できます。
一つ一つの材料が、押しと引きのどちらに、どれくらい効くのか。
その見積もりを正しくできるかどうかが重要です。
今まで考慮に入れたことの無かった要素に気づいて、少しずつでも意識して取り入れていく。
その積み重ねで、より良い精緻な判断ができるようになっていくのではないでしょうか。
出典・参考
本文中の註番号に対応する出典です。「↩」を押すと、本文の該当箇所に戻ります。
- 平澤元気麻雀ch「牌譜検討のススメ」(YouTube。牌譜検討の2つの目的、結果論の注意、検討を始める目安) ↩
- 三麻の覚え書き「【レベル別】雀魂牌譜検討AI・MAKAで検討すべきポイント」(甘露寺隆彬氏、2026年2月) ↩
- zeRo氏のnote「麻雀AI・NAGAの使い方と注意点」(信頼できる領域と不安定な領域の整理) ↩
- 現代麻雀技術論(や〜べ氏)の「手変わり待ち判断」の節(巡目別に必要な手変わりの種類数の目安) ↩
- shoG氏のnote「最も効率的なNAGA検討のやり方」(検討を打ち方に変える5つの手順) ↩
- ゆうせー氏のnote(牌譜添削の記事群)(添削で繰り返し出てくる指摘のパターン) ↩
- ののみや氏のnote「[初中級者向け] NAGA解析の活用法」(AI検討の弱点と、初中級者向けの使い方) ↩